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若山牧水の名作短歌を7つ選んでみました。

日本の歌人で私が最も親しんだのは、石川啄木と若山牧水です。

 

この記事では若山牧水を取り上げます。石川啄木に関しては、こちらの記事をご参照ください⇒石川啄木の「一握の砂」について

 

今日は若山牧水の短歌の中から、私が特に好きな7首、選んでみることにします。

 

なお、若山牧水の短歌についての動画による解説はこちら

 

 

幾山河越えさり行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく

 

 

漂白の歌人・若山牧水の代表作であり、多くの人々に愛され続けてきた名作中の名作です。

 

この歌に酷似した詩があります。それは、カール・ブッセの「山のあなた」です。いずれも、満たされぬ思いが消えることを望んで旅を続けているけれども、寂しさや哀しみは消えず、真の安らぎや幸福にも出逢えないという嘆きを詩にしています。

 

若山牧水の「幾山河」とカール・ブッセの「山のあなた」が多くの人々に愛唱されているのは、天性の詩人でなくても、誰もが青春期には一度は抱いたことがある感情を、わかりやすくものの見事に表現しているからでしょう。

 

 

われ歌をうたへりけふも故わかぬかなしみどもにうち追はれつつ

 

 

若山牧水という詩人の試作の動機、原動力となっている感情を、ストレートに歌っていて、その真っすぐさに胸を打たれます。

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ドラマ「遠山金志郎美容室」では、西田敏行、かたせ梨乃、夏木マリの好演が光っている。

テレビドラマの「遠山金志郎美容室」をご存知でしょうか?

 

1994年7月9日 から 9月24日まで、日本テレビ系列「土曜グランド劇場」枠で放送されました。

 

YouTube動画で一気に最後まで見てしまったのです。

 

「遠山金志郎美容室」には、テレビドラマの良さがパンパンに詰まっていました。

 

今回は、その面白さについてお伝えしましょう。 この記事の続きを読む

中原中也の詩「別離」の奇妙な明るさが哀しい。

中原中也の「別離」という詩を、毎年、数回は想いだします。青春期に愛した詩だからでしょうか。

 

最初の部分を、少し長いのですが、引用していますね。

 

 

さよなら、さよなら!
いろいろお世話になりました
いろいろお世話になりましたねえ
いろいろお世話になりました

 

さよなら、さよなら!
こんなに良いお天気の日に
お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い
こんなに良いお天気の日に

 

さよなら、さよなら!
僕、午睡[ひるね]から覚めてみると
みなさん家を空(あ)けておいでだつた
あの時を妙に思ひ出します

 

さよなら、さよなら!
そして明日(あした)の今頃は
長の年月見馴れてる
故郷の土をば見てゐるのです

 

さよなら、さよなら!
あなたはそんなにパラソルを振る
僕にはあんまり眩[まぶ]しいのです
あなたはそんなにパラソルを振る

 

さよなら、さよなら!
さよなら、さよなら!

 

何だか、明るい調子で歌っているようですが、実は、中原中也の哀しみは、極限に達していたらしい。中原中也ならではの道化節なのですね。

 

この奇妙な明るさにこそ、中原中也の詩の本当の魅力があると私は思っています。名作「一つのメルヘン」も、異様なほど明るい幻視の世界が描かれています。「別離」とは話法がまるで違うのですが「奇妙な明るさ」は共通しています。

 

失望と悲嘆の果てに、たどりついた「奇異な明るみ」が、「別離」の道化であり、「一つのメルヘン」の幻想に他なりません。

 

さて、この「別離」の一節で、ふと口ずさんでしまうのが「あなたはそんなにパラソルを振る」というフレーズです。鮮明なイメージが浮かび上がります。

 

では、中原中也の詩「別離」の全文を引用いたしますので、ぜひ、最後までお読みいただけたら幸いです。

 

 

別離

 

 

さよなら、さよなら!
いろいろお世話になりました
いろいろお世話になりましたねえ
いろいろお世話になりました

 

さよなら、さよなら!
こんなに良いお天気の日に
お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い
こんなに良いお天気の日に

 

さよなら、さよなら!
僕、午睡ひるねの夢から覚めてみると
みなさん家をけておいでだつた
あの時を妙に思ひ出します

 

さよなら、さよなら!
そして明日あしたの今頃は
長の年月見馴れてる
故郷の土をば見てゐるのです

 

さよなら、さよなら!
あなたはそんなにパラソルを振る
僕にはあんまりまぶしいのです
あなたはそんなにパラソルを振る

 

さよなら、さよなら!
さよなら、さよなら!

 

 

僕、午睡から覚めてみると、
みなさん、家を空けてをられた
あの時を、妙に、思ひ出します

 

日向ぼつこをしながらに、
つめ摘んだ時のことも思ひ出します、
みんな、みんな、思ひ出します

 

芝庭のことも、思ひ出します
薄い陽の、物音のない昼下り
あの日、栗を食べたことも、思ひ出します

 

干された飯櫃おひつがよく乾き
裏山に、烏が呑気に啼いてゐた
あゝ、あのときのこと、あのときのこと……

 

僕はなんでも思ひ出します
僕はなんでも思ひ出します
でも、わけて思ひ出すことは
わけても思ひ出すことは……
――いいえ、もうもう云へません
決して、それは、云はないでせう

 

 

忘れがたない、にじと花
忘れがたない、虹と花
虹と花、虹と花
どこにまぎれてゆくのやら
どこにまぎれてゆくのやら
(そんなこと、考へるの馬鹿)
その手、そのくち、そのくちびるの、
いつかは、消えてゆくでせう
みぞれとおんなじことですよ)
あなたは下を、向いてゐる
向いてゐる、向いてゐる
さも殊勝らしく向いてゐる
いいえ、かういつたからといつて
なにも、おこつてゐるわけではないのです、
怒つてゐるわけではないのです

 

忘れがたない虹と花、
虹と花、虹と花、
(霙とおんなじことですよ)

 

 

何か、僕に、食べさして下さい。
何か、僕に、食べさして下さい。
きんとんでもよい、何でもよい、
何か、僕に食べさして下さい!

 

いいえ、これは、僕の無理だ、
こんなに、野道を歩いてゐながら
野道に、食物たべもの、ありはしない。
ありません、ありはしません!

 

 

向ふに、水車が、見えてゐます、
こけむした、小屋の傍、
ではもう、此処からお帰りなさい、お帰りなさい
僕は一人で、行けます、行けます、
僕は、何を云つてるのでせう
いいえ、僕とて文明人らしく
もつと、ほかの話も、すれば出来た
いいえ、やつぱり、出来ません出来ません。