映画「砂の器」を久しぶりに鑑賞。これで、5回目くらしでしょうか。
この映画において、丹波哲郎の役者力の大きさを改めて感じました。刑事が丹波哲郎だからこそ、この映画「砂の器」の重さと格調が表現されうるのだと思いました。
それともう一つ、テーマ曲の素晴らしさ。映画を見終ってからも、ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」を、CDで新たに購入して鑑賞しているくらいです。
映画「砂の器」は、1974年に松竹で製作された日本映画。原作は松本清張の「砂の器」。
監督は松本清張の小説を数多く映画化してきた野村芳太郎。脚本は、橋本忍と山田洋次が担当。
音楽監督:芥川也寸志。作曲・ピアノ演奏:菅野光亮。演奏・特別出演:東京交響楽団。指揮:熊谷弘。
さて、映画「砂の器」のテーマ曲である、ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」について何か書こうと思うのですが、なかなか書き出せません。
人間の過酷な宿命が、この映画音楽では表現されているわけですが、そもそも人間の精神世界を深部から描き出し、そこのドラマ性と豊かな陰影を持たせることは容易ではないでしょう。
その困難に、堂々と立ち向かったのが、この「宿命」という名の組曲にほかなりません。
「宿命」という名から想起するのが、ベートーヴェンの「運命」です。このクラシック音楽の傑作と比較するつもりはありません。
ただ、「宿命」で私が述べたいのは、映画のストーリーには、映画の主人公の宿命には救いはないのですが、映画音楽「宿命」を聴いていると、魂が救われることです。
組曲「宿命」には、確かな癒しがあり、そこから人間への信頼と希望さえ感じとれます。
それだからこそ、この映画音楽「宿命」が、救いのない物語を、これほどまでにヒューマンな映画作品にまで、高めているのでしょう。
私は、これからも、映画とは切り離して(それは難しいことだけれども)、この楽曲「宿命」を聴き続けてゆきたいと思っています。
そうすることで、人生の苦悩と希望を、美しい音楽に昇華する、極めて精神的な活動を体感できるからです。
そうした深い精神的な活動から、ともすれば離れがちな自分自身を正してくれる力も、この映画音楽「宿命」にはあるので有難いと思っています。