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クリント・イーストウッド監督・主演の映画「目撃」を見た。
これは紛れもない傑作映画だ。
その理由は、3点。
1)とにかく面白い。
2)人と人との絆がきっちり描かれているヒューマンドラマであること。
3)エンディングの音楽の秀逸。
「目撃」(もくげき、原題: Absolute Power(「絶対権力」の意))は、1997年公開のアメリカ映画。
製作・監督・主演をクリント・イーストウッドが行い、監督作品としては17作目にあたる。
この映画の魅力はいろいろある。だが、たった一つをあげるとしたら、それは、主演したクリントイーストウッドが「格好いいこと」。
本当に格好いい。こんなに凛とした深みがあり、温かい男は見たことがない。
17作目ということだが、監督としての手腕は申し分ない。
どうしても、サスペンスあり、人間ドラマありということで、全盛期の黒澤明と比較してしまうのだが、安定感はクリントイーストウッドの方が上だ。
ただ、黒澤明には、奇想天外なテーマに挑戦するという、型破りな大胆さがあった。
だから、失敗すると悲惨なのだが、ツボにはまると、誰にも真似できない黒澤ワールドを作り出すことができた。
クリントイーストウッドの話に戻そう。
「目撃」に出演した、クリントイーストウッドの娘役の女優、ローラ・リニーが素晴らしかった。思わず画面に見とれてしまうほどだ。
興味深い創作秘話が残されている。
クリント・イーストウッドは、原作の登場人物や基本的なストーリーは気に入っていた。しかし、大きな不満を抱いていた。それは、登場人物の大半が殺されてしまうことだ。
イーストウッドは、最初に映画用に原作の改編について意見を求められた時、脚本担当のゴールドマンに「観客に気に入られる登場人物は殺さないでくれ」と求めという。そのイーストウッドの要求に沿って、映画の構成は大幅に改変されたのである。
クリント・イーストウッド監督・主演の映画は、一貫した作風がある。
それは、主人公が孤独な魂の持ち主であること。
性格は不器用で、頑固。家族とうまくいかないが、実は温かい人間なのである。
また映画作品としてエンターテインメントの要素を重視している。映画は面白くなければ意味がないという信念を持っているようだ。
しかし、観衆に媚びたりはしない。作品としての格調を重んじ、演出は抑制が効いていて、じんわりと味わえる深みと温かみがある。