パンくずリスト
  • ホーム
  • 美しい詩
  • この明るさのなかへ……八木重吉の詩「素朴な琴」

この明るさのなかへ……八木重吉の詩「素朴な琴」

美しい詩 - 八木重吉
この記事は約 2 分で読めます ( 約 809 文字 )

八木重吉の「素朴な琴」というをご紹介します。

 

【動画】八木重吉の詩「素朴な琴」について

 

私が最も敬愛している詩人の一人に、八木重吉がいます。

 

八木重吉の詩の中から、一篇だけを選べと言われたら、おそらくは10人のうち8~9人までが選ぶのではないか、そう思いたくなるほど美しいがあるのです。

 

その詩が「素朴な琴」。

 

さっそく、全文を引用してみましょう。

 

素朴な琴

 

この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美しさに耐へかね
琴はしづかに鳴りいだすだろう

 

 

八木重吉の詩「素朴な琴」の朗読はこちらに

 

これが全文です。たったの4行だけ。

 

いかがでしょうか?

 

八木重吉詩集を読むとわかるのですが、短い詩がたいへん多い。始まったと思ったら、呆気ないほど簡単に終わってしまう詩が珍しくありません。

 

高村光太郎は八木重吉の詩について「一切の中間的念慮を払いのけることができた」と述べています。

 

つまり、余計なことをグダグタ書かないのが、八木重吉の魅力の一つでもあるのですね。

 

八木重吉の詩を読めば読むほど、八木重吉という詩人は、一生をかけて、余計なものを「払いのける」ことに専念したのではないか、と思うことでしょう。

 

八木重吉はこの世の夾雑物をすべて「払いのける」ことで、人生の中で最も大切なもの、美しいもの、愛すべきものをとらえたかったのだと思います。

 

あるいは、神羅万象の本質、まん真ん中の核心しか興味がなかったので、詩が短くなったとも言えるでしょう。

 

本質だけをとらえて、それだけを限界まで単純に表現する……この祈りに似た聖なる行為こそ、八木重吉の唯一の詩学なのです。

 

そして、その詩学の最も美しい結晶が「素朴な琴」なのだと私は信じています。

 

八木重吉の詩については以下の記事でも語っていますので、よろしければご覧ください。

 

⇒八木重吉の詩「母をおもう」

 

⇒八木重吉の詩「夕焼」

 

⇒八木重吉の詩「鞠とぶりきの独楽」と高村光太郎の推薦文。

 

八木重吉のその他の詩はこちらに

関連記事
  • 栗原貞子の詩「生ましめんかな」

    栗原貞子の詩「生ましめんかな」

    今回は、栗原貞子の「生ましめんかな」という詩をご紹介します。生ましめんかなこわれたビルディングの地下室の夜だった。原子爆弾の負傷者たちはローソク一本ない暗い地下 ...

    2023/03/07

    美しい詩

  • 小林一茶の有名な俳句

    小林一茶の有名な俳句

    小林一茶の代表的な俳句をご紹介しましょう。雪とけて村いっぱいの子どもかな雀の子そこのけそこのけお馬が通る 我と来て遊べや親のない雀 涼風の曲がりくねってきたりけ ...

    2023/02/15

    美しい詩

  • 長澤延子の詩「告白」

    長澤延子の詩「告白」

    長澤延子の「告白」という詩をご紹介します。告白真紅なバラがもえながら散ってゆく日忘却の中から私をみつめる冷ややかな眼差(まなざし)しを知った夏の最中(さなか)が ...

    2022/03/18

    美しい詩

コメント
コメント投稿

コメント

お名前

メールアドレス ※公開されません

サイトアドレス