美しい詩

八木重吉の詩「鞠とぶりきの独楽」と高村光太郎の推薦文。

八木重吉の未刊詩篇の中にも、捨てがたい詩があります。特に以下の「鞠とぶりきの独楽」は、日本近代詩の貴重な成果であると言いたいくらいの傑作だと私は評価しています。

「独楽」は「こま」と読みます。回して遊ぶ、あの玩具の「独楽(こま)」です。

全文は非常に長いので、特に優れたところをピックアップしてみました。

では、「鞠とぶりきの独楽」の一部を引用いたします。

鞠とぶりきの独楽

てくてくと
こどものほうへもどってゆこう

こどもがよくて
おとながわるいことは
まりをつけばよくわかる

あかんぼが
あん あん
あん あん
ないているのと

まりが
ぽく ぽく ぽく ぽくつかれているのと

火がもえてるのと
川がながれてるのと
木がはえてるのと
あんまりちがわないとおもうよ

ぽくぽくひとりでついていた
わたしのまりを
ひょいと
あなたになげたくなるように
ひょいと
あなたがかえしてくれるように
そんなふうになんでもいったらなあ

ぽくぽく
ぽくぽく
まりを ついてると
にがい にがい いままでのことが
ぽくぽく
ぽくぽく
むすびめが ほぐされて
花がさいたようにみえてくる

かんしんしようったって
なかなか
ゆう焼のうつくしさはわかりきらない
わかったっていいきれない
ぽくぽく
ぽくぽく
まりをついてるとよくわかる

まりを
ぽくぽくつくきもちで
ごはんを たべたい

ぽく ぽく
ぽく ぽく
まりつきをやるきもちで
あのひとたちにものをいいたい

まりと
あかんぼと
どっちも くりくりしてる
つかまえ どこも ないようだ
はじめも おわりも ないようだ
どっちも
ぷくぷく だ

いかがでしょうか?

「鞠とぶりきの独楽」は彌生書房から出ていた「定本 八木重吉詩集」で、その全文を読むことができます。

その「定本 八木重吉詩集」の帯に書かれた高村光太郎の推薦文を引用しましょう。

〇大正の末から昭和のはじめ、あんないい、せつない、星のような詩人が居たと思うだけでも、がさつな気持ちがじつとりとしてくる。

〇彼のはかない生涯から、こんなに人の魂を慰めてくれる息を吐いて往つてくれた事はありがたい。

〇八木重吉は詩につつまれていた。彼の思いせまった、やわらかい詩はふりかえらずにおられない。

高村光太郎はこの「定本 八木重吉詩集」の「序」も書いていますが、それも実に素晴らし名文です。

⇒高村光太郎の書いた八木重吉詩集の「序」はこちらに

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