映画「異人たちとの夏」を初めて観た。
1988年に松竹から公開された。
監督は大林宣彦。どちらかというと苦手な監督なので、今まで未見だったのだろう。
しかし、これは名作だ、紛れもない。
風間杜夫、片岡鶴太郎、秋吉久美子、名取裕子、永島敏行など、登場人物がすべて輝いている。
年齢的にはピークを過ぎている役者たちだが、この映画を観ると、全員、今が全盛期だと感じてしまうから不思議だ。
この「異人たちとの夏」が、いかに作品として成功しているか、その証拠である。
ネタバレになるので内容は言えないが、主要登場人物が、必死で生きようとする、懸命に愛する、その純粋で激しい情念が、狂おしいまでに美しい真夏の夢を描き出した、それが映画「異人たちとの夏」である。
特筆すべきは、原作が山田太一の同名小説であること。
映画の会話にどれだけ山田太一節が活かされているのかわからないが、山田太一ふうのスパイスが効いていることは確かだ。
そして、人生を見つめる、厳しく、鋭く、温かい眼差しが光っている。