山田太一ドラマ「沿線地図」を初めて観た。
U-NEXT(ユーネクスト)に登録して鑑賞したのだが、この「沿線地図」が見られるだけでも充分に登録の価値はあると感じた。
山田太一が脚本を担当した、いわゆる山田太一ドラマ「沿線地図」は、1979年に放送された。放送期間は1979年4月13日から同年7月20日まで、全15話である。
ドラマ「沿線地図」は、明らかに「岸辺のアルバム(1974年放送)」の流れをくむ、後継的作品である。
1970年代のドラマだが、「岸辺のアルバム」と違って、すぐさま感情移入できた。特に前半五話までの面白さは、数多い山田太一ドラマの中でも一番ではないだろうか。
高校生でありながら、家出した男女、広岡瞬と真行寺君枝が主人公という設定だが、実は、家出され翻弄される二組の中年夫婦四人が主人公だと言っていい。
この二組の夫婦を演じたのが、河原崎長一郎と岸恵子、児玉清と河内桃子である。
何といっても、この四人の演技力は、安定していて存分に楽しめた。
全編においてフランス人シンガーソングライターのフランソワーズ・アルディによる「もう森へなんか行かない」、「私の騎士 Si mi caballero」の二曲が挿入される。
この二曲の物憂げな曲調が、好景気な日本の陰鬱を象徴しているようで素晴らしい。