怒り心頭に発するいかりしんとうにはっする)」は「激しく怒る」という意味の言葉。しかし「怒り心頭に発する」を「怒り心頭に達するいかりしんとうにたっする)」と間違えて使っている人が、非常に多いらしいのです。

 

以下、大辞泉からの引用。

 

 

文化庁が発表した平成17年度「国語に関する世論調査」では、本来の言い方である「怒り心頭に発する」を使う人が14.0パーセント、間違った言い方「怒り心頭に達する」を使う人が74.2パーセントという逆転した結果が出ている。

 

 

「怒り心頭」の「頭」は「~のあたり」を意味する接尾語。つまり「心に怒りが生じる」ことを伝える言葉なのだそうです。このことは、日本語倶楽部が編集している書籍「間違えると恥ずかしい日本語500」に解説されていました。

 

日常では「頭にくる」という言葉をしばしば使うために、怒りがの天辺まで到達するという意味から「達する」と誤用してしまうのでしょう。

 

しかし、「頭」という言葉が「~のあたり」を意味する接尾語であることを知っている人が、どれくらいいるでしょうか?

 

「心頭を滅却すれば火も亦涼し」という言葉があります。意味は以下のとおり(引用元:大辞泉)。

 

 

心頭(しんとう)(を)滅却(めつきやく)すれば火もまた涼(すず)し

無念無想の境地にあれば、どんな苦痛も苦痛と感じない。

〔補説〕 禅家の公案とされ、1582年甲斐(かい)国の恵林寺が織田信長に焼き打ちされた際、住僧快川(かいせん)がこの偈(げ)を発して焼死したという話が伝えられる。

 

 

この言葉からもわかるとおり、「心頭」の意味を「心。心の中」と正しく理解した方がわかりやすいでしょう。

 

「心頭」は「心と頭」を意味するのではなく、「心」あるいは「心の中」を意味する言葉なのです。

 

そのことがわかれば「怒り心頭に達する」という表現がマズイことに気づくでしょう。

 

以下、もう一度おさらいします。×は間違い、〇が正解。

 

 

×怒り心頭に達する

○怒り心頭に発する

 

 

この日本語の誤用も、無理はない、間違えても仕方がない気もしますね。