風花未来の今日の詩は「11月が怖い」です。
11月が怖い
11月はどんな月になるのか
そう想っただけで
体が小刻みに震えてくる
今年の8月から10月まで
わたしに 何が起きて
わたしが どうかわったのか
振り返るだけでも
ゾッとして
体が固まってしまう
11月が怖いのは
やがて来る真冬に近づくのが
怖いわけではない
11月7日にある CT検査の結果で
新たな がん転移が見つかったら
と想像するのは
そりゃあ 怖いけれど
体が震えるほどではない
怖いのは
わたし自身だ
11月で わたしは
どんな わたしに
遭遇するのだろう
お人好しで
人なつっこく
誰とでも
あたりさわりなく
つきあえる
そういう わたしに
11月は なれるだろうか
その方が
癌を治しやすく
なれるのかもしれない
でも たぶん
わたしは それとは
全く違う わたしに
出逢いたがっている
哀しいこと
苦しいことが
起きてもかまわない
本当の愛に
近づけるのなら
平板で何もない日常より
辛くても
新しい ときめきがある
予測不能な未来の方に
進み出たい
予測できる
整然とした毎日よりも
どんなに小さくても
発見のある暮らしのほうに
わたしに似合う安らぎが
たゆたっている気がする
今いちばん怖いのは
冷ややかに
わたし自身を見つめている
もう一人の自分のまなざし
この胸の高鳴りを
確かに燃えている心の火を
完全に消し去ってしまうかもしれない
冷静すぎる残酷な自分に
わたしが支配されてしまうのが
いちばん怖い
