金子みすゞの「お魚(さかな)」という詩をご紹介します。
お魚
海の魚はかわいそう。
お米は人につくられる、
牛は牧場でかわれてる、
こいもお池でふをもらう。
けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたずら一つしないのに
こうしてわたしに食べられる。
ほんとに魚はかわいそう。
金子みすゞは、山口県大津郡仙崎村(現・長門市仙崎)に生まれました。
仙崎は海に近い町。金子みすゞは漁師町で育ったために、みすゞの詩には、ひんぱんに海や魚が登場するのです。
「お魚」は「金子みすゞの実質的デビュー作と言える」と、松本侑子氏は「100分de名著 金子みすゞ詩集」の中で書いておられます。
デビュー作と言われますと、確かに「お魚」は、実に素朴な詩ですね。幼い子供が素直に感じたことをつぶやいた、という感じがします。
ただ、素直すぎて、詩としては未熟ではないかと、一方で思い始めた瞬間、「いやいや、ここに金子みすゞの凄さがある」と思い直したのでした。