- 投稿 2017/01/30
- 日本語 - 美しい日本語(言葉)
ある会社の社長が朝礼で「一期一会(いちごいちえ)」を「いっきいっかい」と言ってしまい、社員たちは反応に困った、という話を聞いたことがあります。
これは笑い話ですが、「一期一会」という言葉自体は、とても笑えない、難しさ、深さがあると、私は感じています。
ですから、良い言葉だと思っていても、日常では、なかなか使えません。
「一期一会」の意味を辞書的に知る。
「一期一会」の意味を間違えないためには、その由来を知る前に「一期」と「一会」を分けて理解しましょう。
「一期(いちご)」は「人が生まれてから死ぬまでの間。一生。一生涯」という意味。
「一会(いちえ)」には「一つの集まり・会合。仏教の法会(ほうえ)など」という意味があるほか、「一度会うこと、一度の出合い」という意味にも使われます。つまり「一会」には「会合」「出合い」という2つの意味があるわけです。
「一期」と「一会」という2語の意味をふまえると、「一期一会」の意味がはっきりしてきます。
「一期一会」を大辞林は次のように説明しています。
いち ごいちえ 【一期一会】
1)〔茶会に臨む際には,その機会は一生に一度のものと心得て,主客ともに互いに誠意を尽くせ,の意〕 一生に一度だけ出る茶の湯の会。 〔千利休の弟子宗二の「山上宗二記」にある「一期に一度の会」とあることによる〕
2)一生に一度だけの機会。
以上で、辞書的な理解は完了です。次は由来を学びましょう。
「一期一会」の由来を知る。
「一期一会」という言葉の由来・語源を知っていないと、とても日常生活では使えません。この機会に、その由来を正しく学びましょう。
もともとは、茶道から出た言葉です。千利休の言葉ともいわれますが、千利休は書物をあらわしておりません。
弟子の山上宗二は「茶湯者覚悟十躰」の一つに、利休の言葉として「路地ヘ入ルヨリ出ヅルマデ、一期ニ一度ノ会ノヤウニ、亭主ヲ敬ヒ畏(かしこまる)ベシ」という一文を残しています。
出典は、山上宗二の著書『山上宗二記』。
「茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いであるということを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くしなさい」という意味です。
さらには、井伊直弼が茶道の心得として、著書『茶湯一会集』巻頭に「一期一会」と表現したことにより、四字熟語の形で広まったとされています。
『茶湯一会集』に書かれた井伊直弼の言葉は、ウィキペディアで紹介されています。少し長いのですが、なかなか味のある文章なので、引用しておきます。
抑(そもそも)茶湯の交會(こうかい)は一期一會といひて、たとへば、幾度おなじ主客交會するとも、今日の會ににふたゝびかへらざる事を思へば、実に我(わが)一世一度の會(え)なり。さるにより、主人は萬事に心を配り、聊(いささか)も麁末(そまつ)なきやう、深切(しんせつ)實意(じつい)を盡(つく)し、客にも此會に又逢ひがたき事を辨(わきま)へ、亭主の趣向何一つもおろかならぬを感心し、實意を以て交るべきなり。是を一期一會といふ。
以上が「一期一会」の由来の説明となります。次は、個人的な話となって恐縮ですが、この言葉との出逢いのエピソードを紹介しつつ、私なりに「一期一会」を意訳してみますね。