意味を取り違えやすいので、注意が必要な言葉に「天地無用てんちむよう)」があります。

 

以下の例文のうち、「天地無用」の正しい使い方はどちらでしょうか?

 

 

1)この荷物には「天地無用」というラベルが貼ってあるので、さかさまにしても大丈夫です。

 

2)この荷物には「天地無用」というラベルが貼ってあるので、さかさまにしないように気を付けてください。

 

 

正解は、2です。

 

「天地無用」とは、運送する荷物の箱などに表示する用語。荷物の上下を逆さまにすると破損する恐れがあるからしてはならないという意味

 

いわゆる配送する時に注意を喚起する用語であり、ラベルやステッカーでも表示されます。

 

この場合、「天地」は上下の意。荷物、書籍などの上部と下部を指していう。「無用」は、してはならない、取り扱ってはいけないの意。

 

平成25年度の文化庁の「国語に関する世論調査」で、「天地無用の荷物。」という例文を挙げて、「天地無用」の意味を質問したところ、そのの結果は次のとおりでした。

 

 

「天地無用」の意味は?という問いの答え

上下を気にしないでよい・・・・・・・・・29.2%
上下を逆にしてはいけない・・・・・・・・55.5%

 

約3割の人が間違えていますね。

 

間違えやすい理由は、「無用」という言葉には様々な意味があるからだと思われます。

 

デジタル大辞泉は「無用」を以下のように説明。

 

 

無用(むよう)の意味

 

[名・形動]

 

1 役に立たないこと。使い道のないこと。また、そのさま。無益。「無用な(の)臓器はない」⇔有用。

 

2 いらないこと。また、そのさま。不要。「ここでは遠慮は無用です」「心配御無用」「問答無用」

 

3 用事のないこと。「無用の者立ち入るべからず」

 

4 してはいけないということ。禁止。「立ち入り無用」「開放無用」「貼紙無用」

 

 

2番目の「不要」の意味で解釈すれば、「天地無用」は上下はどちらでもいい、ということになってしまいますよね。

 

正解は、4番目の「禁止」です。

 

運送会社では従業員に対して教育が行き届いていないと、経験のない従業員の中には「天地無用」の表示を「上下を気にしなくてもいい」と解釈してしまう場合もでてきそうです。

 

これからは「天地無用」に代わる、間違えにくい表示が必要かもしれませんね。

 

なお、「天地無用」という言葉には「荷物をていねいに扱わなければいけない」という意味も含まれているそうです。

 

配送注意用語には「天地無用」の他に、「取扱注意」「壊れもの」「精密機器」「逆さま厳禁」「下積み厳禁」があります。

 

この中では「逆さま厳禁」が一番わかりやすいですよね。その他の配送注意用語だと、上下を逆さまにしてはいけないという意味は読み取りにくと思われます。