山口誓子の俳句をご紹介します。
突き抜けて天上の紺曼珠沙華
空の紺、曼殊沙華の赤の対比が素晴らしいのはもちろんですが、何といっても「突き抜けて」の発句が実に効いていますね。
学問のさびしさに堪へ炭をつぐ
青春期から最も好きだったのが、この「学問のさびしさに堪へ炭をつぐ」という句です。
何かを成し遂げようとすると人は孤独になりますね。真剣に物事を考えても独りぼっちになる。
その「さびしさ」を「炭をつぐ」ことで堪えているという感じが、求道的で青年だった私にはたまらなく愛しかったのでしょう。
炎天の遠き帆やわがこころの帆
若山牧水ふうで良いですね。「こころの帆」という表現が、甘酸っぱくて、若々しくて……こういう軽みのある(ストイック過ぎない)「ふくらみ」のある句も貴重でしょう。