今回ご紹介するのは、淵上毛錢(ふちがみもうせん)の詩「約束」。
さっそく、引用してみますね。
約束
今日も
夕まで
なにごともなく
生きた
この分では
明日という日は
たしかに
約束されてゐる
いま
私は静かに待つてゐる
静かに
待つている者には
きつと
約束は果たされる
淵上毛錢は、誰と、どんな約束をしたのか?
それを説明したら、身もふたもないということになってしまうだろう。
答えを導き出そうとするわけではないが、「約束」という言葉の周辺に遊星のようにある、キーワードをあげてみよう。
今日 夕 待っている 果たされる
果たされることは「死」ではないだろう。
美なるものの成就、透明になるまで本当の自分になりきること、世界と完全調和すること、などなど……。
「果たしたいこと」は、読者が自由に思い描けば良い。
優れた表現作品は、ほぼ例外なく、結論を読者に委ねる。「約束」もまた、読者が完成させるべき詩である。
●当ブログ「美しい言葉」で取り上げた、淵上毛錢の詩