1948年に公開された映画「破戒」を初めて鑑賞して、日本映画の金字塔だと評価したい衝動にかられた。
監督は木下恵介。主演は池部良。宇野重吉の熱演が光っている。池部良の相手役である桂木洋子の初々しさも特筆に値するだろう。
木下恵介の手腕に、改めて驚嘆させられた。ラスト近く、衝撃的なシーンの直後に、風に揺れる樹木を映した、そのセンスの良さには感動を禁じ得なかった。
ラストシーンの純粋さに、号泣しないではいられない。白い帆をはって、川を下って旅立ってゆく、池部良と桂木洋子。二人を見送る子供たち。
部落差別という重いテーマを扱いながらも、未来への希望を抱かせる、最終盤の演出は、見事であり、映画の素晴らしさを存分に伝えてくれている。
宇野重吉の存在が、全編を通して、実に効いていた。
友情、人生肯定、人間愛……差別よりも愛は深い、愛は差別を超えることを伝えてくれている、これぞヒューマン・ドラマだ。
こういう深い人間愛を描いた映画は、稀有であり、日本映画の金字塔であることに間違いない。
太平洋戦争が終わって、わずか3年後に、これだけの良質な映画がされたことに、同じ日本人として感謝したい気持である。
あの名作「野菊の如き君なりき」に通じる、抒情あふれる映像の流れが素晴らしい。
日本人として、一度は鑑賞しておいてほしい名作中の名作である。