大学在学中にとてつもない数の詩作をした、その原稿が奇跡的に遺っていた。
いろいろ断捨離(身辺整理)しており、昔付き合っていた彼女からの手紙とかも、すべて処分してしまったのに、なぜか自身の(初期詩篇)は現存していたのだ。
ただ、まったくの未整理なので、ここに掲出するには、前段階としてセレクション作業が必要となる。
今はその時間的、体力的な余裕がない。
そこで、大学時代の詩篇を紹介する前に、整理が簡単な、22歳~26歳までに作詩(中期詩篇)したものを、順に掲出してゆきたい。
それまでいろいろあったが、生活的にも精神的にも安定していた、約5年間に制作した詩を発表できたらと思う。
で、今回は「憧れの世界」をご紹介。
憧れの世界
少しずつ瞳が潤んで輝きだす
ゆっくりと雲がきれて
新しい光がさしてくるように
薄紅の傷のなごりも
背後の黒褐色の影も
この不思議な静けさにとけて
今まで知らなかった世界が
眼前に開けてくる
不安も嘆きも哀しみも
前に出ようとする気負いも
何かをつかもうとして痛んだ翼も
何も今は現れない
ただ温かい
潤いある広い世界が
はっきりと見える
体の隅々まで
今は無心な夢で
いっぱいに満たしていなければならないのだろう
首をふっても
眼をつぶってもいけない
いま感じているすべてが
いま生きているすべてなのだ
ゆこう 憧れの国に
さまざまな色がとけてにじんで
みずみずしい輝きだけがある世界に
すべての時を
いまだけに傾けて踊っていた
あの妖精たちも
もう見えはしない
激しい燃焼が
たった一度の賭けが
清らかな安らぎにかわる
何度も 何度も
込み上げて 高まり
やがて大きな一つの波となって
叩きつけた 精一杯の爆発が
あの広くて大きい
透明な憧れに姿かえるのだ
ゆこう 憧れの世界に
ゆこう あの美しい憧れの世界に
先ほど、ふっと想い出したのだが、この詩はある楽曲を聴いて、着想を得たのだ。その曲というが、グスタフ・マーラー作曲の「交響曲 第5番 第4楽章 アダージェット」である。
映画「ベニスに死す」のテーマ曲にもなったので、広く知られているのだが、この機会に、久しぶりに聴いてみて、いわゆるクラシック音楽の偉大さを痛感した。
焦燥感を取り除き、私自身の目指す仕事に没頭するためにも、クラシック音楽の存在は大きくなりそうだ。