当ブログ「美しい言葉」の目的の一つに「言葉の底力を再発見すること」があります。

 

そのため、今日からシリーズで、偉人たちの名言をご紹介してゆくことに決めました。

 

その際、名言集・ことわざ集・格言集といった類の書籍をネタ本にするような安易なことは絶対にしません。私が実際に感銘を受けた言葉だけを厳選して掲載いたします。

 

記念すべき第1回目は、偉大な映画監督であり、役者でもあったチャールズ・チャップリンの登場です。

 

では、さっそく、チャップリンの名言をご紹介しましょう。

荻昌弘さんが教えてくれたチャップリンの名言。

 

以下のチャップリンの名言を私に教えてくれたのは、映画評論家の荻昌弘さんです。

 

美しさの中には、必ず悲しみがある。

 

この言葉は何だか、チャップリンの映画全体のイメージを象徴化しているような気さえしますね。

 

初めて「ライムライト」をテレビで見た時、映画解説をされていたのが荻昌弘さんでした。

 

「ライムライト」(Limelight)は、1952年製作のアメリカ映画。監督はチャールズ・チャップリン。

 

ふだんは穏やかで冷静な語り口が魅力の荻昌弘さんでしたが、「ライムライト」の解説の時は、いつもと様子が違うのでした。

 

「今日は何も言うことがありません」と前置きし、上記のキャップリン自身の「美しさの中には、必ず哀しみがある」という言葉だけを紹介されたのです。

 

あの荻昌弘さんがどれほど「ライムライト」という作品に敬意を払っているかが伝わってきて、それだけでも泣きそうになったのを今でも憶えています。

 

チャップリンの映画は、コメディ(喜劇)がほとんどですが、底流には深い哀しみがたたられているのです。

 

チャップリンの白鳥の歌といわれる「ライムライト」は、「美しさの中には、必ず悲しみがある」といったチャップリンの美学を具現化したような傑作です。

 

「悲しくも美しい」とは、私たちがしばしば使う形容ですが、チャップリンが生み出した映画は、まさに「哀しくも美しい」人間ドラマです。

 

チャップリン映画が、ただのセンチメンタリズムによる産物ならば、これほどまで長く賛美されることもなかったでしょう。

 

チャップリン映画は、人間の真実の姿を見破ってしまう、残酷なほど鋭い観察眼が生み出した世界。人の心が見え過ぎてしまうことの哀しみを歌っている映像詩、それがチャップリン映画だと言えます。