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「本当の優しさって、何だろう」と、1年のうち、何度か自問自答します。
そうした時に、必ず想い浮かぶ人物がいます。
それは、デッドマール・クラマーさんです。
デットマール・クラマーは「日本サッカーの父」
彼は東京オリンピックに出場する、日本のサッカー代表を強くするために、ドイツから招かれたコーチです。
彼のおかげで、サッカー日本代表は、急激に強くなり、東京五輪でベスト8入りをはたし、次のオリンピック、メキシコ大会では見事、銅メダルに輝きます。
日本に本格的なサッカーを最初に植え付けたことから「日本サッカーの父」と呼ばれています。
クラマーさんは、名言をたくさん残した人でもあります。
「おのれの役割をまっとうした人間ほど美しいものはない」
この言葉は、メキシコで3位決定戦を終えた日本チームをクラマーさんが見て、発した言葉だったと思います。選手全員が全力を出し尽くし、疲れ果て、倒れ込んでいたそうです。
サッカーに密着して解説するなら、「選手1人ひとりが各ポジションという役割を全力で果たした姿は美しい」ということになります。
しかし、現在では、しばしば、自分の好きなことに打ち込んでいる人たちを、賞賛する時の言葉として使われているんですね。
かなり前のことですが、正月の高校サッカーの放送中に、このクラマーさんの言葉は紹介されたのですが、なんて素晴らしい言葉なんだろうと感じ入りました。
現実はどうでしょう。
ほとんどの人が、自分の役割さえ見つけられないで悩んでいます。
役割とは「運命」という言葉に置き換えても良いでしょう。
自分の天職を見つけられた人は幸運としかいいようがありません。
急に自分の宿命のような職が見つかることは稀です。
だから、まずは、何か、今、熱中できるものを見つけ、没頭することから私も始めようと思っています。
東京でサッカーライターの修行をしている時、1人のサッカーマニアの方が、古い雑誌からコピーをわざわざとってくれて、クラマーさんの名言集をつくってくれ、それを贈ってくれました。
そのファイルは、今でも、私の宝物です。
そのクラマーさんが、90歳でお亡くなりになりました。
クラマーさんから学ぶ「本当の優しさ」
クラマーさんというコーチは怖ろしく厳しい人でした。あの世界的なストライカーである釜本選手も震え上がったほどの鬼コーチです。
練習試合でふがいないプレーしかできなかった選手たちに「君たちに大和魂はあるのか」と叱咤という話は有名です。
しかし、一方で、こんなエピソードがあります。
深夜、選手たちが寝静まった頃、クラマーさんは部屋に入ってきて、選手1人ひとりの毛布をかけなおして行ったそうです。
そんなことまでしてくれるコーチって、いるでしょうか。
もう、おわかりですよね。
クラマーさんの厳しさは、深い愛情に裏打ちされたもの、つまり、本当の優しさだったのです。
ホテルを予約したサッカー協会に断りをいれ、選手と同じ宿舎に寝泊まりし、味噌汁と納豆の朝食を選手とともに食べたという話を知った時、本当に愛情あふれた人なのだなあと感動しました。
最後に、クラマーさんが、自分の部屋に貼っていたという言葉をご紹介しましょう。松本育夫氏は、ゲーテかシラーの詩の写しではないかと語っておられます。
ものを見るのは目ではなく
心で見ろ
ものを聴くのは耳ではなく
心で聴け
目それ自体は物を見るだけであり
耳それ自体は物音を聞くだけである
この言葉も私は好きで、時々思い出しては、自分を戒めています。