当ブログ「美しい言葉」で取り上げる映画は、どれもこれもかなり古いのですが、今日は少し新しめの作品です。

 

珍しく2002年という21世紀の映画です。

 

それは、森淳一監督の「Laundry ランドリー」。

 

 

これは悲しいお伽噺なわけで……

 

Laundry ランドリー

 

監督・脚本は森淳一。

『GO』の窪塚洋介、TV、雑誌、CMで活躍中の小雪共演によるハートフルドラマ。
祖母の経営するコインランドリーで働く青年・テルと、不思議な女性・水絵の出会いをきっかけに、テルは新しい世界へと旅に…。

人生の居場所を見失ってしまった男女の心の交流を描いたロードムービー。

 

今回は、かなり前に書いたレビューから転載いたします。

 

(以下、転載)

 

■見るたびに、新たな発見がある映画だ。実に丁寧な作り方をしている。

じっくり感想を書いている時間がないので、ポイントをしぼって考えてみたい。

 

1)まずは、ナレーションの魅力だ。最初と主人公が号泣するシーンのナレーションの響き合いが効いていた。

「僕の名前はテル…」。リフレインの効果は絶大だ。

2)小道具の使い方。毛糸の帽子がいい。白い鳩。赤い旗。ビール瓶。バス。ガスタンク。高圧電線の鉄塔。水溜り。靴紐。銀のカップ。

3)基本に忠実な構成。起承転結の転結が、特に良かった。万引きによる暗転が効いている。

4)伏線が丁寧に張られている。例えば、「盗む」という言葉の使い方。全編の響き合いは見事。落穂拾いのように、伏線を一つ一つ拾ってゆく手法は、好感が持てた。つまり、シーンとシーンとの結びつきを非常に大切にしているのである。

5)人物造形の巧みさ。頭に障害を持つ若い男と万引き癖のある若い女、それに足長おじさんだ。この人物配置を見ても、この映画が童話的であるのがわかる。主人公の癖も巧みに使っている。鼻をこする。側頭部をたたく。

6)シンプルの音楽を活かした御伽噺的なテイストも良かった。ピュアな仕上がりになっている。全く同じ旋律の音楽のヴァリエーションを4~5種類使っていたのが効果的だった。

7)舞台設定も、田舎にこだわったのが成功している。コインランドリーという限定された場所がなければ、この映画は成立しない。

8)状況設定も練り上げられている。「もし、コインランドリーで下着が盗まれないように見張っている記憶障害をもつ男が、盗みの常習のある女と出逢ったとしたら~」。

■実に基本に忠実な映画だ。基本以外のことは何もしていない。

■まず主要なイメージ(映像)、小説ならばキーワードがあれば作品はできてしまうことを知った。次に、小道具、セリフ、キャラクターがくる。

■それと、この映画では現代のアイテムが極端に排除されている。ケータイやインターネットなどは一切出てこない。作品の純度を上げる要因となっている。

■この映画は、メルヘン、御伽噺。つまり、象徴性の強い作品ということ。

 

(転載は、ここまで)

 

かなり前に書いたレビューですが、当時は、かなり熱いタッチの書き方をしていたようですね。

 

まわりに、シナリオとか、小説を書いていた仲間が多かったので、その影響もあったのかも。

 

小雪と窪塚洋介の演技は初々しかったです。

 

そして何より、森淳一監督の才能を、感じた映画でした。

 

童話のような残酷で美しい世界を、純度高く描き切った映画空間。その哀しき世界に、理屈ぬきに、浸ってほしいと思います。