アーノルド・シュワルツェネッガー主演「ターミネーター」の感想

心理劇テイストの映画が続きましたので、今回は近未来SFアクションの古典的名作です。

 

この「ターミネーター」は、ジェームズ・キャメロン監督の出世作であり、
主役のアーノルド・シュワルツネッガーも、この映画から、アクション大スターへの階段を駆け上ってゆくことに。

 

ターミネーター

 

1984年公開
監督:ジェームズ・キャメロン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、マイケル・ビーン、リンダ・ハミルトンなど。

 

シュワルツェネッガーを不動の地位に押し上げたSFアクション。機械軍と人間の戦いに終止符を打つため、機械軍は人間のリーダーを抹殺すべく殺人マシンを現代に送り込む(引用元:「キネマ旬報社」データベース)。

 

映画「ターミネーター」はこちらで視聴可能です

 

「ターミネーター」はシリーズ化され、現在は5まで公開されています。

 

「ターミネーター2」も、非常に面白かった記憶があります。

しかし、3は極端につまらなくなっていました。

 

チェックしたところ、監督が3からジェームズ・キャメロン監督ではなくなっていることに気づき、なるほどという感じです。

 

監督がかわると、ここまで映画のテイストが変わってしまうものなのか…怖いものですねえ。

 

テイストだけでなく、根本的なところが変化している気がします。

 

「ターミネーター2」までは、SFアクションといいつつも、人間劇になっています。

アクション映画にしては、人間の描き方が、実に克明なわけです。

 

ところが、3になると、いきなりCGアクションだけの映画になってしまった。

 

CG技術は進歩しているし、スピード感も、3の方があります。

しかし、人間臭さ、生臭さがなくなってしまって、リアリティというか、皮膚感覚に訴える力が消滅してしまったのです。

 

しかし、この「ターミネーター」は、シナリオの骨格もしかりしているし、
セリフもよく、エンタメを超越したような気品さえ感じさせてくれるのです。

 

何度でも鑑賞に耐えうる、稀有なSFアクション映画だと言えます。

 

そして、これほど解説不要の映画もないでしょうね(笑)。

増村保造「赤い天使」の感想

増村保造の全作品の中から、1作だけを選ぶとしたら、やはり、この映画でしょうか。

 

映画「赤い天使

制作年:1966年

監督:増村保造

出演:川津祐介/芦田伸介/若尾文子ほか

 

白でもなく、黒でもなく、「赤い天使」であることが、この映画の印象を鮮明にしていると思います。

 

映画「赤い天使」はこちらで視聴可能です

 

私は好運なことに、この映画を、東京の映画館で見ることができました。

 

ワイドスクリーンですから、相当な迫力があり、観客の反応も感じられて、満足できました。

 

しかし、最初にビデオをレンタルしてきて観た時の強い感銘にはかなわなかったのです。

 

天使と申しましても、「赤い天使」なのですから、かなり生々しい場面も描かれます。

 

ヒューマニズムあふれる戦争映画を期待していたら、間違いなく、裏切られます。

 

その裏切りは、良い意味での裏切り………そう、私自身は感じました。

 

凄いシーンを言い出すとキリがないほどありますが、中でも医師と看護婦、その生のぶつかり合いがすさまじい。

 

特に、女優・若尾文子の体当たり演技には、のけぞれずにはいられません。ここまで描かなくても良いのでは、と思うほど、抉り出すように描き切っています。

 

「天使」という名のついた映画は多いのですが、その中で、異彩を放っているのが、この「赤い天使」なのです。

 

傑作と呼ばれるには、完成度に問題があるかもしれません。しかし、少々の不備など吹き飛んでしまうほどの圧倒的な存在感が、この映画の強さだと言えるでしょう。

 

怖れずに、ぜひ観ていただき、思い切り、驚いてほしいと思います。

ヴィム・ヴェンダース「パリ、テキサス」の感想

今回はヴィム・ヴェンダース監督の映画「パリ、テキサス」をご紹介しましょう。

パリ、テキサス

1984年仏=西独映画。
監督:ヴィム・ヴェンダース。
脚本:サム・シェパード。
音楽:ライ・クーダー。
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキーほか。

いろんな発見があった。

これはロード・ムービーであり、心理劇でもある。
明るい場面と暗い場面との対比(照明を落としたシーンが多い)、やるせない音楽、主人公の男のかたまった表情などが作り上げた微妙な世界は、練り上げられた脚本がなければ、その場から瓦解してしまう。

こういう地味な作品こそ、技術的に高度なものが要求されること。
少しでも演出をしくっじったら、臭くて見れたものではないだろう。

小説でいうところの説話の順序が、いかに大切か。

少しずつ男の謎が明かされるとともに、男が変化してゆく様を細密に描いている。

ともすれば退屈しそうな内容だが、ディテールの積み重ねと、センスのいい演出で、視聴者を引っ張ってゆく。

ハリウッドのエンタテイメント方程式のような明確な分割は難しいが、明らかにここにも享受者を飽きさせない、意図する世界に見る者を引きずり込んで放さないテクニックが、物の見事に機能している。

■映画「パリ、テキサス」表現(鑑賞)のポイント

1)謎の解明は少しずつ。いっぺんには見せない、語らない。

2)明と暗を効果的に使う。

3)人物の登場させ方、再会などを劇的に描く。

4)シーンごとにアイデアを入れる。キラリと光るもので、シーンを生かす。

5)抑制した表現で、世界を深める。心理の内側を見せる。

6)エンディングは、すみやかに。

7)ナスターシャの2回出てくる回転シーン、1回は8ミリの中で、2回目は子供と再会し抱き合う時、が効いている。

8)演出は慌てない。見る者を必ず待たせてから見せる。すぐに感情を爆発させない。

9)主人公の男に気取りが少しもない。ケレンミを感じさせないテイストとマッチングしている。ハードボイルド的なカッコよさから程遠い存在だが、魅力的に描けている。

10)日本人には作れないだろうなあという感じ。懐の深さと品格、志の高さが、作者或いは作品に、普段着のように見に付いている。気負いなく、美が普通になっている。

最後に、ナスターシャが少ししか出てこないが、これも監督の美意識なのだろう。抑制こそ美徳であるとヴェンダースは言っているようだ。彼女の美しさを知り抜いているからこそ、それを開放しないのである。あくまで主人公は男なのだ。そこが、たまらなくいい。

[欠点] もし欠点があるとするなら、長すぎるセリフにあるのではないか。この監督のリズムと言えばそれまでだが、冗長な会話はテンポを悪くするだけでなく、聞き取りにくいという欠点もある。