せっかくお会いできたのに、ほんの少ししか時間がさけなくて申し訳ありません」

 

この「せっかく」を「切角」と書くのは間違いです。正しくは「折角」と書きます。

 

「せっかく」は、そのことに充分に努力を払ったり、期待したりしていた気持ちを強く表すことを意味する言葉です。

 

敵対する人間関係を意味する「角つき合わせる」、嫉妬の感情をあらわす「角を生やす」など、「角」を用いた日本語は少なくありません。

 

では「せっかく」は、どうして角を「折る」で「切る」ではいけないのでしょうか?

 

それを理解するためには「折角」の語源、由来を知っておく必要があります。

 

「折角」の由来

 

一つ目は「漢書」の故事から由来するという説。

 

朱雲という人物が手ごわいことで有名な五鹿の論客・充宗と論争し、これに勝った時の話。

 

周囲の人は「お見事、鹿の角を折ったり」と賞賛しました。このことから、苦労して何かをすることを「折角」というようになったといいます。

 

二つ目は「後漢書」のエピソード。

 

ある雨の日、伊達男として人気が高かった学者の林宗が外出。その時、彼のかぶっていた頭巾の角が雨に濡れ、折れ曲がっているのを見た人々は、それをまねて、わざと帽子の角を曲げるようになりました。ここから、わざわざ何かをすることを「折角」というようになったと伝えられています。

 

 

前者の「角」は「つの」であり、後者の「角」は「かど」ですが、どちらも角を「切る」のではなく「折る」のですね。

 

このことに注目すれば「せっかく」を「切角」と書いてしまうという失敗はおかさないで済むでしょう。