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カテゴリー:西條八十

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西條八十の「蝶」という詩が愛される理由

美しい詩 - 西條八十

西條八十(さいじょうやそ)の「」という詩をご紹介します。

 

 

やがて地獄へ下るとき、

そこに待つ父母や

友人に私は何を持つて行かう。

 

たぶん私は懐から

蒼白(あおざ)め、破れた

蝶の死骸をとり出すだらう。

さうして渡しながら言ふだらう。

一生を

子供のやうに、さみしく

これを追つてゐました、と。

 

西條八十の数多い詩、歌詞の中で、この「蝶」を愛する人が多いようです。

 

なぜなら、ネットで多くの人が感想を書いているから。

 

気になるのは、なぜたくさんの人たちが、西條八十の「蝶」を愛しているのかということ。

 

この「蝶」という詩が、多くの人の心を惹きつけてやまないのは、そこには人生の真実があるからではないでしょうか。

 

詩というと、人生の美しい側面、夢や幻想を与えてくれるものだと考えがちかもしれません。

 

しかし、実はそういう幻影には、人の魂を救済する力は希薄なのです。

 

甘い陶酔よりも、凍り付くような真実を、人は希求しているのかもしれない。

 

「地獄」「下る」「蒼白め」「破れた」「死骸」「さみしく」というネガティブな言葉が、並べられています。

 

でもそのネガティブワードによって、私たちの魂が沈みこむことはない。

 

なぜなら、人生はそういうものだ(残酷なほどはかなく短い)ということを、私たちは知っている(予見している)から。

 

人生には口には出せない、他人には、いやどんなに身近な人にも話せない真実がある。西條八十の「蝶」には、誰にも話してはいけない、人生の真実がある。

母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?…… 西条八十「ぼくの帽子」より

美しい詩 - 西條八十

母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?」というフレーズに聞き覚えのある人は多いのではないでしょうか。

 

映画「人間の証明」(1977年)のキャッチフレーズになったことで有名です。

 

この映画の原作である森村誠一の小説「人間の証明」も、読みましたが、映画も小説も決して傑作ではなく、後世に語り継がれるほどの作品かというと、首をかしげざるを得ません。

 

戦後日本で最も売れた小説は、出版社の出している数字はほとんどあてになりませんが、映画化されたエンタメ小説では、森村誠一の「人間の証明」か、鈴木光司の「リング」だとも言われているとか。

 

たいへん話題になった、売れに売れた、そういうことが話のネタになるだけのこと。

 

と言いつつも、私はこういう映画は嫌いではありません。B級エンタメくささが、いい味になってたりしますから。

 

映画の作品としての評価はともかく、結果として、キャッチフレーズに使われた「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?」という詩だけが、流行が去った後にも残った。

 

【動画】西條八十「僕の帽子」の朗読

 

テレビCMでもさかんに流された「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね? 」は、西條八十(さいじょう やそ)の「ぼくの帽子」という詩の一部なのですが、その詩の質の高さ(本質的な魅力)ゆえに、多くの人たちに今もなお愛され続けているかに見えます。

 

それでは、西條八十の「ぼくの帽子」(のちに「帽子」と改題)の全文を引用してみましょう。 続きを読む

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