アルフレッド・ヒッチコックの映画はほとんどすべて見ているはずですが、なぜか、この「北北西に進路をとれ」は未見でした。
これはヒッチコック異色作です。他のヒッチコック映画と根本的に何かが違っていますが、それは何なのでしょうか。
今回鑑賞してみて感じたことは、ケーリー・グラントはヒッチコック映画には似合わないということ。
ヒッチコックの映画には美女は欠かせないけれども、美男は不要のような気がしたのでした。
長身で美男のケーリーグラントは、古いメロドラマには合うかもしれないけれど、ヒッチコックの世界では切れが鈍いですね。
ケーリー・グラントの相手役を演じたエヴァ・マリー・セイントは美しいけれども、グレース・ケリー、キム・ノヴァク、ティッピー・ヘドレンなど、ヒッチコック映画を鮮やかに彩った美女たちと比べると、どうしても地味に感じてしまうのですね。
エヴァ・マリー・セイントはミステリアスですし、充分に魅力的なのですが、ケーリー・グラントのせいでトーンダウンしていまっているように思えてなりません。
ケーリー・グラントが出てしまったことで、ヒッチコックの文法はすでに崩れているのです。
ラストはヒッチコック映画には珍しいハッピーエンドになってしまったのも、配役とも関連しているのではないでしょうか。
ヒッチコック映画に出演した美男俳優は他にもいます。「マーニー」で好演したショーン・コネリーは良かった。ただ、ショーン・コネリーケーリー・グラントのような典型的な美男ではなく、大根役者でもありませんでした(笑)。
物語設定も違います。やはり、ヒッチコック映画では、一方的に男の方が美女を愛してしまうという設定の方が、らしくなりますね。
ケーリー・グラントを本気で愛してしまったエヴァ・マリー・セイントは興ざめです。さらにハッピーエンドになってしまっては、もうヒッチコック映画ではないといっても過言ではありません。
相思相愛は、ヒッチコック映画では非常に珍しいので新鮮で、そこそこ楽しめたのでしたが、ただそれだけの作品でした。