まだ見ていない人がいたら、ぜひ鑑賞をおすすめしたいのが、岡本喜八監督の「斬る」だ。黒澤明監督の「用心棒」と「椿三十郎」を足したような快作(足すけど割らない)である。
仲代達也が主演だが、これで三船敏郎が出ていたら、もっと有名になっていただろう。
2023年1月4日の深夜、見返してみて(3回目の鑑賞を終え)、岡本喜八監督は天才だと確信した。ラストシーン、最後のカットまで神経が行き届いている。
岡本喜八監督の映画愛は半端ない。
「斬る」は1969年に公開された日本映画。
監督は岡本喜八。原作は山本周五郎の「砦山の十七日」。脚本は岡本喜八と村尾昭が共同で執筆。
出演は、仲代達也、高橋悦史、中村敦夫、星由里子、東野英治郎、神山繁など。
最初から最後まで、画面に釘付け状態になってしまった。
スピーディな展開と独特のリズム感が、たまらなく良い。
なお、1962年に公開された、市川雷蔵主演の「斬る」とは別作品である。
本日、3回目の鑑賞。高橋悦史がいい味を出していた。
仲代達也のなかなか見られない「とぼけた感じ」の演技が素晴らしい。
このユーモアが、岡本喜八節の大事な要素と言えるだろう。
それにしても、この「斬る」という作品、題名で損をしている。もっと有名になっていい傑作中の傑作だ。
最終盤のクライマックス、仲代達也の変則的なアクションで神山繁を斬るシーンは見ごたえ充分だ。凝り性の岡本喜八監督らしい、きらりと光る場面である。
そして、ラストシーン、女郎たちが全員解放されて、雨の中を帰ってゆくシーンも、意外性充分で、ここにも隠れた映画の楽しみ方があると言いたい。
【追記:2023年7月15日の4回目の鑑賞で気づいたこと】
岡本喜八の他の映画にも共通することだが、以下のこと(〇〇する)を学べる。
困難克服
窮地脱出
目標達成
価値観収得(遂行)
映画はただ楽しめばいいものであって、そこから何かを学ぼうとするのは邪道かもしれない。
だが、名作映画からは必ず何かを学べるとわたし風花未来は思っている。
黒澤明は、自分の作品を映画館に見に来た人が、見る前と見た後では、その人の人生が変わってしまう、そういう映画を作りたいと言っている。
仲代達也、高橋悦史、東野英治郎、この3人(の生き方・知恵・性格など)から、私は未来の希望を垣間見た。
挑戦することで運命を開く
極限状況だから知恵を絞りに絞る
極限状況だからこそユーモアは必要
型を破らないと本当の自分は見えない
何ものにも縛られない自由を愛す
理屈もなしに人が恋しい愛しい
本当の自分に正直に生きよう
7つの人生訓というより、突破力を生む言葉を、私は岡本喜八の「斬る」から導き出せた。
最後に「斬る」というタイトルについて
敵を、悪者を「斬る」という意味ではないだろう。
おそらくは自分の人生の壁を、また壁を突破できないでいる、自分の中の弱さを打ち砕く、そのために「斬る」というタイトルを岡本喜八はこの映画につけたのではないだろうか。