真夜中のカフェ・ラテ~風花未来の詩57

今日の風花未来の詩は「真夜中のカフェ・ラテ」です。

 

真夜中のカフェ・ラテ

 

抗がん剤の副作用が

荒れ狂うのは

冷え込みのきつい日だ

 

寒さが増すと

抗がん剤は

これでもかとばかりに

全身をしびれさせる

 

今日はこれまで最も激しい

しびれに襲われた

 

しびれは針のように

私の皮膚を指し

無慈悲な攻めを

全身へ広げてゆく

 

両手、両足だけでなく

顔のほほまでも

しびれてしまった

 

抗がん剤の副作用による

残酷なしびれは

体の神経を麻痺させるが

私の魂までは

無力化はできない

 

そう信じてはいるが

真冬のしびれは

悪魔のように手ごわい

 

しびれの激しい日は

寝ているしかなかったのだが

最近

私なりの「反抗」を開始した

 

温める

とにもかくにも

体を温めるのだ

 

速攻で効くのは

入浴すること

 

少し熱めの湯に

しっかり浸かりながら

手足をもみほぐしてゆく

 

これで数時間は

元気になれる

 

しかし

怖いの深夜

 

冷え込みが厳しくなり

空腹状態になると

しびれは容赦なく

私をムチ打ち始める

 

そういう時は

もう

これしかない

 

真夜中のカフェ・ラテ

 

牛乳を多めにして

しっかり泡立てて飲む

温かなカフェラテは

とがり

ささくれだった

全身の感覚を

やわらかに

甘く包みこみ

優しく癒してくれる

 

ダイエット中なので

糖質は痛いのだが

狂暴なしびれに対抗するには

カフェ・ラテは

心強い仲間

クリーミーな無数の泡たちは

頼もしい援軍なのだ

 

甘く

まろやかな

やさしい仲間を

当分は

手放せない

 

ただし

一杯だけに

しておこう……

 

白鳥が棲む湖のほとりで~風花未来の詩56

今日の風花未来の詩は「白鳥が棲む湖のほとりで」です。

 

白鳥が棲む湖のほとりで

 

体全身がしびれるほど

冷えきっていて

布団から

なかなか出られない

 

窓の外は夕暮れのように暗い

立ち上がれないのは

異常な冷え込みのせいか

春を遠ざける

雪まじりの雨のせいか

 

いや

違う

 

今日は

抗がん剤投与から

四日目の朝

 

自宅でも46時間

抗がん剤を投与し

昨日 ようやく

針がぬけたのだ

 

副作用は

真夜中の

冷たい霧のよう

 

私の全身を包みこみ

芯まで

しびれさせ

私の中の光を

奪おうとしているかのよう

 

だが しかし

数ヶ月前の苦しみとは

あきらかに違っている

 

あの時は

眠りという深い

底なしの沼に

沈んでゆくしかなかった

 

でも 今は 違う

 

深い霧におおわれていても

時が経てば

霧のかなたに出られる

 

霧のかなたには

明るい地平が

広がってゆく

 

その期待が

かなうという確信が

冷たいしびれに

全身をしばられていても

私の中で

脈打っている

 

私がはまっているのは

絶望の沼ではない

 

聴こえてくるのは

白鳥の羽ばたき

優雅な舞いが起こす

風のささやき

 

初恋のように

人が愛しくなる

切ないけれど

甘く透き通った旋律

 

そう

私が今いるのは

白鳥が棲む

湖のほとりなのだ

 

まだ

体はしびれたままだけど

いつか

悪魔の呪いはとける

愛の指輪は

きっと見つかる

 

あと少し

もう少し……

抱きしめたい~風花未来の詩55

今日の風花未来の詩は「抱きしめたい」です。

 

抱きしめたい

 

愛よ、もう一度

 

抱きしめたい

この愛を

 

愛すること

愛されることで

 

命が歓んでいる

 

これまでの

辛い哀しみ

苦い抗いも

今は

あなたと

わたしが

たしかに

つながることで

すべてが

温もりの中で

ほどけ

溶けてゆく

 

ああ

抱きしめたい

この愛を

 

ああ

愛よ、もう一度

 

わたしたちの

素晴らしい未来のために