高村光太郎へ~風花未来の詩59

今日の風花未来の詩は「高村光太郎へ」です。

 

高村光太郎へ

 

高村さん

高村光太郎さん

 

あなたのことを

私は若い頃

尊敬してはいませんでした

いや

嫌っていたかもしれません

 

詩人で

彫刻家

精神を病んだ

妻の智恵子を

生涯

愛しつづけた

 

若い頃の私は

高村光太郎という人間を

受け入れられなかったのでしょう

 

あなた自身も

若者から

理解されてもいないのに

憧れの対象として

自分が見られる

そういうことを

拒絶していたのでしょうか

 

それがどうどうしたことか

歳を重ねるごとに

あなたの存在が

私の中で

鮮明になってきているのです

 

私は今

あなたを

偉大な人として

敬愛しているのではありません

 

あなたの

並外れた不器用さ

自分自身が人生に広げた風呂敷を

きちんと畳めなかった

風呂敷の畳み方の下手さは

世界一ではないだろうか

「ぼろぼらな駝鳥」みたいに

無惨なままで

人生を終えた

 

戦前

戦中

戦後

この3つの時代を

生きるのが

あなたにとって

どれだけ過酷であったことか

 

戦時中に

戦争を讃美する詩を書いた

自分が許せなかった

 

戦後7年間

山奥の「おんぼろ小屋」で独居し

自分を「暗愚」と責めつづけた

 

自身の失敗を

挫折を

見栄えの良い

何かにすり替えて

自分をごまかし

正当化することが

あなたにはできなかった

できようもなかった

 

世界中で

いちばん不格好な

おじいさん天使として

死んでいった

 

ああ

高村光太郎さん

 

私はあなたの

その弱さ

その愚直さ

その無惨さが

愛おしいのです

 

ぶざま過ぎる

醜態さえも

神々しいことを

あなた

高村光太郎は

私に教えてくれた

 

愛する高村智恵子は

1938年(昭和13年)

10月5日に亡くなりましたよね

あなたが

智恵子の死後に書いた

詩の美しさは

永遠不滅の大事件です

詩の発する波動は

今も私の魂を震えさせます

 

私も

残りの人生を

ぶざまに

愚直に生きてゆきます

あなたのように私も

風呂敷をじょうずには

畳めないかもしれないけど

私なりの愛のかたちを

貫いてゆきます

 

高村光太郎の詩は以下のページにまとめました。

 

高村光太郎の詩一覧

 

高村光太郎は、風花未来が影響を受けた詩人を5人あげるとしたら、必ず入ると思います。

 

二十代の頃、高村光太郎詩集を常に携帯して読んでいた、あの当時の気分が懐かしく想い出される今日この頃です。

永遠の瞳~風花未来の詩58

今日の風花未来の詩は「永遠の瞳」です。

 

永遠の瞳

 

あの日

あそこで

 

あ!

 

声にならない声で

私は叫んでいた

 

驚きが

測量不能な速さで

私の心の中を

駆け巡った

 

その時

私は

何に

どのように

なぜ

驚いたのか

気づかなかった

気づく時間も

心のゆとりもなかった

 

あ!

 

確かに

あの時

あの場所で

私は胸の奥で

叫んだ

 

ほんのわずかな時間

かわした言葉は

ひとこと

ふたこと

なのに

どうして

いったい何が

起きたのだろう

 

そう

たしかに

あなたの瞳が

輝いた

あの一瞬が

永遠になったのだ

 

あなたの瞳

一点の曇りもない

幼子のような

澄みきった

蒼い瞳

 

穢れと

汚濁と

嘘八百が

うずまく

この世の中で

生きていながら

なぜ

どうして

何が功を奏して

そんな

一点の濁りもない

瞳で

人を

命を

そして

目の前の私を

まっすぐに

見つめられるのか

 

あの澄み切った

一点の穢れもない瞳を

私は見つめた

そして

見つめられた

 

生きてゆくのに

これだけで

もう充分なのだ

映画「気まぐれ天使」で合唱される讃美歌の詩

映画「気まぐれ天使」で合唱される讃美歌の詩が素晴らしいので、ご紹介します。

 

映画「気まぐれ天使」は、こちらで視聴可能です

 

1:02:19から合唱が始まりますので、ぜひとも、お聴きください。

 

喜びの讃美歌を
主に向かって歌わん

 

愛する心
賛辞をささげて

 

主がお生まれになった
喜びの歌が
空を突き抜ける

 

憂うつと悲しみを
追い散らして
主がお生まれになった
すばらしき日

 

主に歌わん
喜びの讃美歌を
主に歌わん
喜びの讃美歌を

 

愛する心
賛辞をささげて

 

主がお生まれになった
喜びの歌が
空を突き抜ける

 

憂うつと悲しみを
追い散らして

主がお生まれになった
すばらしき日

 

主に歌わん
喜びの讃美歌を

 

主のみ言葉が
我々の前に現る
主のみ言葉が
我々の前に現る

 

信仰によって
主の天使の歌が聞こえる
主の天使の歌が聞こえる

 

我が主 王への讃美歌

 

我らも崇敬の心で参加する
我らも崇敬の心で参加する

 

主に注がん
我が嘆願を

 

主は聞き入れ
我らを認め
お救いくださる

私は特定の宗教を信仰していませんが、宗派とかを超越した普遍的なパワーが、この讃美歌の詩にはありますね。

 

映画「気まぐれ天使」は、1947年にアメリカ合衆国で公開されたファンタジー映画。ロバート・ネイサンによる1928年の小説 『司教の妻』(The Bishop's Wife)が原作である。

 

監督 ヘンリー・コスター
原作 ロバート・ネイサン 『司教の妻』 (The Bishop's Wife)
製作 サミュエル・ゴールドウィン
出演者

ケーリー・グラント
ロレッタ・ヤング
デヴィッド・ニーヴン

 

戦争が終わって2年目の映画ですからね。テーマが純粋すぎるくらいに純粋。

 

女優のロレッタ・ヤングが神々しいまでに美しい。

 

天使が登場する映画はかなりありますが、その中でも地味ながら佳作と言えるのではないでしょうか。

 

全体のストーリーの流れはぎこちないのですが、心温まる個別のシーンが素晴らしい。

 

その中でも、子供たちが讃美歌を合唱するシーンは、思わず落涙してしまうでしょう。