独りごと~風花未来の中期詩篇8

今回は風花未来の「独りごと」というをご紹介。

 

独りごと

 

華やかなものから

遠ざかってゆく

 

土のように素朴で

石のように単純で

何よりも健やかなものを

大切にしていたい

 

黒い瞳と

白い花がいい

 

硬質で

粘り強い

確かな器がほしい

 

揺れ動き

幻惑する舞踏よりも

じっと動かないで

辛抱しつくして

やがて ひっそりと

小さな実を結ぶ

あたらしい命を

慈しみつづけたい

 

水底に光るものが

眼に痛い

よどみのない川はうつくしい

でも わたし自身は

もう どこに流されない

 

わたしはまた久しく

空の色を忘れていた

よぶんなものを洗いながすこと

広い世界をめざしてゆくこと

でも どうやら それは

岩肌の手ざわりを

見失っては

かなわぬ願いのようだ

 

独りごとを言っているうちに

少しずつ視界が

明るくひらけてきた

 

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安らぎ〜風花未来の詩18

一泊二日の入院ということで、たかをくくっていたら、とんでもなかった。

 

ナースステーションの真ん前の病室なので、一晩中、ナースコールが鳴りっぱなしで、一睡もできない。

 

で、今回は「安らぎ」という詩を書いてみた。

 

安らぎ

 

病棟に安らぎはない

いや、きっとある

安らぎを探すのだ

待っていても

安らぎはやってこない

たぶん

盗みとるように

奪いとるように

攻めの姿勢でないと

安らぎなんか

見つかるはずもない

 

夜が長すぎる

イビキなどの騒音が

すごいだけでなく

ベッドが異様に固く

急性の腰痛に悩まされていた

逃げ込むところは

談話室しかなかった

夜明けはまだ遠い

灯りが嬉しい

味気ない人工光に

尊い安らぎを覚えたのは

生まれて初めてだった

ふだんは飲まない

缶コーヒーが

美味かった

 

あるじゃないか

安らぎは

見つけようと思えば

これからの

抗がん剤投与も

慌ただしい中で

機械的に進められて行くだろう

それでもどこかに

何かと何かの隙間にでも

安らぎは

見出せるに違いない

 

夜が明けた時

談話室の窓の向こうを指さして

誰かが

「アレが、富士山だよ」

とつぶやいた

真っ白な大きな山が

意外と近くにハッキリ見えた

 

  • 風花未来が、風花未来の詩について動画で語りましたので、ぜひとも、ご視聴ください。

 

⇒【動画】風花未来が自身の詩について激白!

 

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