ふだん何気なく使っている挨拶言葉にも、落とし穴があります。

 

多くの人が間違えて使っているのが「ご苦労さまごくろうさま)」という言葉です。

 

仕事が終わった時に上司に向かって「ご苦労さま」と言ったら、失礼にあたるので注意してください。

 

「ご苦労さま」は目上の人には使えない丁寧語。もともと、部下をねぎらうための言葉なのです。

 

一方、「お疲れさまおつかれさま)」はいたわりの言葉。「お疲れさま」は下位の者が目上の人に対して、その苦労に対するいたわりの気持ちをあらわす表現です。

 

会社などで、仕事が終わった時に「お疲れさまでした」というふうに使います。

 

目上の人には「お疲れさま」を、下位者には「ご苦労さま」を使うのが基本です。

 

ところが、こうした「ねぎらい」「いたわり」の言葉の使用法には、いろんな説があり、ややこしい問題を含んでいます。

 

一つ目の説は「ご苦労さま」も「お疲れさま」も、目上の人には使えないという意見。

 

二つ目の説は「ご苦労さま」も「お疲れさま」も、目上・目下にかかわらず、両方とも使えるという意見。

 

こうなると、どれが正しいのか正しくないのか、混乱してしまいそうですが、混乱を避けるための方法はあります。

 

「ご苦労さま」という表現にはバリエーションがあり、それらの丁寧(敬意)の度合い(段階)を知っておけば良いのです。

以下の表現は、右に行くにしたがって、丁寧(敬意)の度合いが高くなります。

 

「ご苦労さま」のバリエーション

 

「ご苦労」「ご苦労さん」「ご苦労さま」「ご苦労さんでした」「ご苦労さまでした」「ご苦労さまでございました」

 

こう見ると「ご苦労さまでした」と「ご苦労さまでございました」は、目上の人にも使えるのではないかと感じますね。

 

では次に「お疲れさま」のバリエーションと、その敬意の度合いを見てみましょう。

 

以下の表現は、右に行くにしたがって、敬意の度合いが高くなります。

 

「お疲れさま」のバリエーション

 

「お疲れ」「お疲れさん」「お疲れさま」「お疲れさんでした」「お疲れさまでした」「お疲れさまでございました」

 

こうして見ると、「お疲れ」「お疲れさん」「お疲れさま」は、下位者や同僚にも使えそうだと感じますね。

 

最後に現実的な対策を。

 

敬語は、使われた側に失礼と感じられた時点で失敗です。

 

そのため、「ご苦労さま」は使わない方が賢明です。「ご苦労さまでした」「ご苦労さまでございました」と言って、上司に「部下のくせに上司にたいして『ご苦労』とは失礼だろう」と思われたらまずいでしょうから。

 

ですから、上司、部下、同僚、すべてに「お疲れさま」を使えば、無難だと言えます。「お疲れさま」は、使う側も使われる側も抵抗感がないので、問題なく使えるのではないでしょうか。