サトウハチローの「母という字を書いてごらんなさい」というのをご紹介します。

 

母という字を書いてごらんなさい

 

母という字を書いてごらんなさい
やさしいように見えて むずかしい字です
恰好のとれない字です
やせすぎたり 太りすぎたり ゆがんだり
泣きくずれたり……笑ってしまったり
お母さんにはないしょですが ほんとうです

 

文字や言葉そのものを詩にしてしまうことも、詩人の得意技の一つで言えるでしょう。

 

サトウハチローは「母」という一文字を物の見事に詩にしてしまった。

 

ユーモアがあり、哀歓があり、母親への愛情もそこはかとなく伝わってきます。

 

最後の一行には意外性があり、この一行が書けることが作家としての「豊かさ」を示していると私には感じられました。

 

私は常日ごろから「漢字一文字の世界」に惹かれる傾向がありまして、記事にしたことがあります。

 

⇒光(ひかり)。漢字一文字の美しい日本語。

 

また、サトウハチローの詩は何回か取り上げています。魅力的が詩がたくさんあるからです。才能の豊かさは、数多い優れた日本の近現代詩人の中でもトップクラスだと言って間違いありません。

 

五感(感性)の鋭さ、情感(喜怒哀楽)の豊かさ、観念ではなく、生活感覚に根差した、皮膚感覚に近い人間愛などなど……。

 

読んだ瞬間に「ハッとする」輝きを放つ独特のフレーズ表現は、サトウハチローの天分ですね。「天才」という言葉を思わず使いたくなるのどです。

 

以下の詩を読んで、ぜひとも、フレーズの「ハッとする」輝きをご堪能ください。

 

サトウハチロー「小さい秋みつけた」の言葉力

 

サトウハチローの「長崎の鐘」

 

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