音もなく駆けぬけて行った少女の記憶

古い自分の記憶には興味がある。

古いけれども鮮やかな記憶は、忘れかけていた自分自身を取り戻すための契機になる、そんな気がしているからだ。幼少時代のことで、しばしば想い出すシーンがある。

子供のころ、よく遊んだ路地。

そこを、一人の少女が、走っている姿。

私は真横から、その少女が駆けぬけるのを、茫然と眺めているのである。

なぜか色彩はない。
モノクロームの世界である。

日差しは感じられない。
薄い灰色の空間を、手足が長い、黒髪の少女が、音もなく駆けてゆく。

陽射しの熱さは感じられないし、少女の足音も聞こえない。
それなのに、その場の空気感は、異様なほど鮮やかに伝わってくる。

あの時は、私はうっとりと何を見ていたのであろうか。

駆けっこをしている普通の少女に、私は「神」を感じていたのかもしれない。

不思議な静寂の中で、映像だけが鮮やかに流れてゆく、遠い日の記憶である。

はっきり言えることは、当時の私は、自分の気持ちを表現する言葉を持っていなかったことだ。

白くほおおけた心の空洞を、少女が神々しい光をまとって走ってゆくのが見えた。

今ならば、そのように言葉で、何とか、あの奇妙な感じについて、言い表すことができる。

言い表しがたい、秘め事めいた神的経験について、人に伝えられるのは、言葉によってでしかできないのである。

この場合、最初に言葉があるのではない。

不可思議な感覚がまずあって、その体験を知ってもらうために、言葉を探すのだ。

言葉と言葉を組み合わせて、その微妙な感じを、伝えようと努めるのである。

私にとって、言葉の必要性は、そうした欲求から生まれているのかもしれない。

「記憶」といえば、もう一つ、忘れられない鮮明な映像がある⇒渡り鳥の記憶

ドラマ「青い鳥」の豊川悦司と夏川結衣の透明感に心震えて…

今日ご紹介するのは「青い鳥」。

 

1997年のテレビドラマですが、本当にこの時期に良い作品が、たくさん出ていますね。

 

『青い鳥』(あおいとり)は、1997年10月10日から12月19日までTBS系「金曜ドラマ」枠で放送されたテレビドラマ。主演は豊川悦司。(引用元:ウィキペディア)

 

テレビドラマ「青い鳥」はこちらで視聴できます

 

■みずみずしい役者たち

 

豊川悦司夏川結衣が、まだ若くて透明感があります。

 

それに演技派の佐野史郎が絡むので見ごたえ充分。永作博美、それに鈴木杏(すずきあん)もかなり良いです。

 

■静かだけれど、激しいドラマ

 

「人は未来の国からこの世に生れてくるためには、おみやげを持ってこなければいけない」という言葉が第1話に出てきます。

 

そのおみやげが、その人の宿命となる……そういう伏線でしょうか。

 

全体に静かなドラマです。しかし、耳を澄ますと、かなり鋭い音で音楽が鳴っていることに気づきます。

 

登場人物の心と心が触れあい、激しく共鳴しているんです。

 

実際に劇中にはそういう音楽は流れないけれど、確かに、切ない音をかき鳴らしている、弦の震える様子さえ見えてくる。

 

そんな神秘的な香りがするドラマです。 この記事の続きを読む

長瀬智也が主演した「白線流し」が根強い人気を持つ理由

長瀬智也が1996年に出演したドラマが、今もなお多くのファンを魅了し続けているらしい。

 

そのドラマのタイトルは「白線流し」。

 

執筆に疲れた時、DVDで鑑賞しているんですが……、これほどまでに丁寧に時間をかけて作られているドラマは、今後は、もう出ないかもしれないと想うほどの傑作です。

 

このドラマ「白線流し」のテーマも自分探しなんですね。

 

1996年の作品ということで、主演の長瀬智也酒井美紀が、初々しく、旬オーラが鳥肌立ちを誘うほど。

 

テーマや、出演者の瑞々しさもさることながら、驚かされるのは、ドラマづくりの丁寧さです。

 

ワンシーンの質の高さが凄い。

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