特捜最前線の最大の見どころは、アクションとか逮捕劇ではない。
船村刑事の人情劇にこそ、特捜最前線の精髄が息づいている。
今回ご紹介する「第85話 死刑執行0秒前」「第127話 裸の街Ⅰ・首のない男!」「第128話 裸の街Ⅱ・最後の刑事!」も、船村刑事の泣き節と執念に、私たちは酔い、感動できるのだ。
以上の回は、すべてアマゾンプライムで鑑賞可能だ。
大滝秀治が演じた船村一平という刑事についての解説は、ウィキペディアに詳しいので、かなり長いが引用しておく。
船村 一平
演 - 大滝秀治
警部補。1925年(大正14年)6月6日生まれ。新潟県で出生、東京都出身。刑事生活40年。神代とも数十年の付き合いがあり、彼をはじめ、特命課のメンバーからは「おやじさん」と呼ばれている。
気性が荒い者揃いの特命課スタッフの中でも最もその傾向が強く、「犯罪を立証することも大切だが、残された者のためには時として目を瞑ろう」という思想の持ち主である。そのために事件性と関係していても「どうして、あの娘をそっとしておいて上げないんだ」などと他の刑事にくってかかることも多数。
一方で相手の境遇を知りつつもそれに付け込んだ捜査を行うことから、娘の香子は勿論事件の関係者や犯人の家族からは憎しみや悲しみの捌け口にされることも少なくなかった。
ただ、同僚の刑事たちからは絶大なる信頼を得ており、紅林からは「おやじさんが辞めるなら自分も辞めます」、叶からは「僕はおやじさんみたい(な刑事)に成りたいんです」、滝からは「おやじさんのファンなんです」とも称されている。
家族は妻と子供が二人いたが長男・秀平は6歳で他界、妻の香代も癌に侵され、その看病のため、1979年(昭和54年)の9月に刑事を辞職し、妻の郷里・飛騨高山に旅立つ。妻の他界後は東京に戻り、娘の香子と共に妻の名を冠したビーフシチュー店を経営していたが、その従業員が関わった事件で神代と再会し、彼の説得で1980年(昭和55年)の7月に特命課属刑事に復職することとなる。
刑事に戻ってからは娘の駆け落ち、その夫の死と不幸な経験を繰り返したのち、自身の心臓病が悪化。刑事の職を続けるかどうかで苦悩した末、ドクターストップがかかり1985年(昭和60年)の8月に刑事を再び退職する。
再退職後は倉庫の作業員として働いていたが、自分を事件の証人として訪ねてきた橘と桜井を拒絶する一方で、全く面識のない西岡刑事の尋問に対してはあっさり自白するという謎めいた行為を見せている。
なお、船村をメインとしたエピソードの脚本は塙五郎が特に多く手がけており、船村が退職した第430話をもって、塙も番組を降板している。
これまでに当ブログで取り上げた、船村刑事が活躍する回は以下のとおり。
- 大滝秀治の演技の凄さは、その感情表出の意外性にある。
「うっ! 感情をこんな形で表現するなんてこと、できるんだ!? こんな演技、見たことない!」と感じ入り、それ以降は、大滝秀治が演じる船村刑事の虜(とりこ)になってしまうのだ。
例えば、泣きながら犯人にビンタする、感情の高まりを抑えるかのように、水道で顔を洗うだけでなく、頭から水をかぶる、なんてことは、船村刑事にとっては普通の感情表現だったりする。
演技がうまいというより、演技力が飛びぬけているのだ。
自分自身には厳しいが、他者には限りなく優しく、時に犯人の罪さえも許し、大きな愛で包み込もうとする、なんていう常人にはできないことをやってのけてしまう。
泣く時も、笑う時も、全身全霊、それが大滝秀治が演じる、船村刑事なのである。