NHKの総合テレビが三夜連続で1964年に日本で開催された「東京オリンピック」のドキュメントを放送しています。
1回目と2回目を見たのですが、これがかなり良いです。
古関裕而が作曲した開会式の行進曲「オリンピック・マーチ」を聞くたびに、なぜか涙ぐんでしまいます。別段、リアルタイムの記憶があるわけでもないのに、血が騒ぐのを抑えることができません。
日本人の遺伝子の中に、この「オリンピック・マーチ」が組み込まれてしまったのかと感じるほどです。
それにしても、この行進曲は、何と晴れやかなんだろう。澄みきった青空、そこに映るのは、夢と希望だけ……。
太平洋戦争により焼け野原となってしまった日本で、オリンピックが開催されたことで、日本の経済成長が加速されたことは疑う余地はありません。
しかし、また2020年に東京で五輪を開催して、経済効果を見込むという安直な考え方を、支持する気は毛頭ないのです。
よりより国づくりの方向性さえ見えない混迷の時期に、五輪開催で世界中から人を呼び込んでも、意味はないでしょう。
これから日本で開催するべきは、スポーツの祭典ではなく、日本人の心の畑を広く、深く耕すことに役立つイベント。日本人だけが良ければいいという国益の追求ではなく、地球規模の平和的な心の交流だと思うのです。
今回のNHKのドキュメントも、その真のテーマは、もう一度、東京でオリンピックを開催しましょうということではなく、「昔は良かった」というふうな回顧録でもありません。
当時の日本と今の日本とを比較することで、未来の日本について考えるヒントを見つけることなのです。
1964年に聞いた「オリンピック・マーチ」が象徴する世界を、未来につなげてゆくこと。その祈りに似た気持ちだけは抱き続けてゆきたいものです。