今回ご紹介するのは、かつて「月曜ロードショー」という番組で映画の名解説をしていた、荻昌弘の映画評論集です。
映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《作品鑑賞篇》 SCREEN新書
映画の難しい話ではなくて、有名な映画作品について具体的に語ってくれているので、非常に親しみやすいのです。
で、その内容ですが、これが、かなりショッキングでした。
ショックを受けた理由は、いろいろあります。
この電子書籍で取り上げられている映画作品は、以下のとおりです。
道
昼下がりの情事
恋人たち
太陽がいっぱい
怒りの葡萄
野いちご
アラビアのロレンス
大脱走
軽蔑
柔らかい肌
幸福
欲望
サムライ
アポロンの地獄
ロミオとジュリエット
真夜中のカーボーイ
ウッドストック
ある愛の詩
ベニスに死す
エクソシスト
タワーリング・インフェルノ
愛の嵐
ジョーズ
タクシー・ドライバー
未知との遭遇
2001年宇宙の旅
地獄の黙示録
ブリキの太鼓
映画好きでない人でも、見たことがある名作がそろっていますよね。
私も、未見の作品は少なかったのですが、例えば「太陽がいっぱい」について、荻昌弘の評論を読みますと、のけぞって、でんぐりかえるくらいのショックを受けました。
映画評論として優れていることは、もちろんです。しかし、それよりも、文章の美しさが素晴らしい。
文体の品格と格調の高さ。知的でありながら、人を酔わせるリズムと流れの良さ。
これまで、私なりに「美しい日本語で書かれた作品」の定義がありました。でも、今後は、荻昌弘の「映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《作品鑑賞篇》 SCREEN新書」が、新たな美しい日本語のお手本となる、そんな気さえしているのです。
以下、荻昌弘の映画評論の魅力をあげてみましょう。
1)映画作品よりも面白い。
ホント、なんですよ。映画作品よりも、荻昌弘の批評の方が面白いのです。それくらい、荻昌弘の文章は、知的で華麗、クールでビューティフル。
2)作品の核心をつく鋭さ。
文章がどれほど優れていても、映画評論そのものが、的はずれな独りよがりであったら、意味がありません。表現のしなやか、語り口の穏やかさとは裏腹に、核心を射ぬく眼光は鋭いのです。
3)あふれんばかりの人間愛
荻昌弘の温かいまなざし、優しさが、知的な文体からも、静かににじみ出てくるところがたまりません。荻昌弘は、映画を愛したと同じくらい、人間を愛した人だと感じられます。
知的な文体でも、時に目頭が熱くなってしまうのは、荻昌弘のあふれんばかりの人間愛のためだと思うのです。