山田太一が脚本を担当したテレビドラマ「男たちの旅路」を、NHKオンデマンドで鑑賞しました。

 

「男たちの旅路」は「岸辺のアルバム」と並ぶ、山田太一の代表作であり、傑作であることは間違いないと、今回、見直してみて確信した次第です。

 

「男たちの旅路」は、1976年2月から1982年2月までNHKにて放映されたテレビドラマで、全12話、スペシャル版をあわせて13話で構成されています。

 

極めて古いドラマですが、現在見ても決して色あせていません。というか、むしろ今見るからこそ、価値があるのではないでしょうか。傑作は時代を超えると言いますが、まさにその通りだと感じました。

残念ながら、NHKオンデマンドでは、第3部の第3話までしか公開されておりません。第4部の3話とスペシャル版は未公開となっております。

 

ただ、これらを私はDVDレンタルで見ているので、結局「男たちの旅路」は全話見たことになりました。

 

感想を書こうとする時、やはり、70年代~80年代にかけて放送されたドラマであることを、どうしても無視できません。神風特攻隊の生き残りのカードマンを、鶴田浩二が物の見事に演じきっています。

 

任侠映画の主人公という印象が強い鶴田浩二ですが、山田太一マジックにかかると、ガードマンになったり、シャツ職人になったり、キャラに幅が出てきて、非常に面白いのですね。

 

鶴田浩二が演じる中年のガードンマンは硬派ではあるが、ただの頑固者というわけではなく、現代社会に柔軟に対応するセンスも持っているところが、この「男たちの旅路」に深みを与えていると思うのです。

 

水谷豊桃井かおり、この二人と鶴田浩二とのからみ方が実に興味深い。どこが興味深いかというと、現代っ子である二人の行動に対する鶴田浩二の反応に意外性があって面白いのです。

 

予想に反して寛容であったり、ここで怒るかというということで徹底的に意地を通す。そういうところが、ドラマとして目が離せません。

 

ドラマとしての完成度とかはどがえしにして、この「男たちの旅路」の最大の魅力は、鶴田浩二の「お説教」です。小説でも、ドラマでも、映画でも、登場人物に「お説教」させることは、邪道とされています。いきなり、物語がつまらなくなるから。

 

しかし、「男たちの旅路」の鶴田浩二の「お説教」には痺れます。こういう「お説教」ならば、何千回、何万回でも聞いてみたい。なぜなら、こんな「お説教」をしてくれる人間など、この世のどこを探してもいないからです。現代ではもちろん、70年代にもいなかったでしょう。

 

「男たちの旅路」の鶴田浩二が演じたガードマンは、山田太一の作った虚像です。あんな人物がいたら、どれほど魂が救われることだろうと思いますが、現実には存在しません。

 

それは、山田太一の切なる願いが生み出した虚像。私としてはそれを「祈りの虚像」と呼びたいのです。

 

私は山田太一のドラマが好きなので、これからもずっと鑑賞し続けるつもりでいます。でも、一般的に、山田太一のドラマを見る人の数が減って行ってしまわないか、そのことを考えると、非常に不安になってしまうのです。

 

1人でも多くの人が山田太一ドラマを見てくれるように、私はこのブログで語り続けてゆこうと思っています。