山田洋次監督の映画「男はつらいよ お帰り寅さん」を見た。
泣けて、泣けて、仕方がない。
どうして、涙が出てくるのだろう。
それは、きっと「時」のせいだ。
この映画は、現在と過去が交互に描かれる。同じ役者の若い時と、現在を映し出せるのは、長い歴史を持つ「男はつらいよ」シリーズだからである。
吉岡秀隆と後藤久美子が、いい味を出していた。
吉岡秀隆の演技力は定評があるところだが、後藤久美子は、おばさんと呼ばれる年齢になっても、なお美しく、だがやはり「年を取った」という感じは避けられず、それだけで、胸に何かが込み上げてくる。
この映画のテーマは「時」だ。
「時」は、何と残酷なのだろう。誰もが「若い頃は良かった」と思う。
だが、現実は、過去には帰れないし、「時」は残酷に今も流れ続けている。
この映画「男はつらいよ お帰り寅さん」では、過ぎ去った「愛しき日々」がこれでもかとばかりに映し出される。
私は「寅さんシリーズ」は全作品を見ているが、ひょっとすると、今回のこの「男はつらいよ お帰り寅さん」が、最高傑作ではないか、とさえ思った。
アマゾンのレビューを読んだが、マニアが多いせいか、辛口のコメントが少なくなかった。
後藤久美子の棒読みセリフ、吉岡秀隆の目をむく癖などを批判している人がいたが、それらも、私にとっては「味」だった。
冒頭の桑田佳祐は、客寄せに使ったのだろうか。これだけは違和感を覚えた。まあ、それさえも、許容範囲内だと甘く採点したい。