- 今日の風花未来の詩は「心をからっぽにして」です。
心をからっぽにして
遠い昔
よく通ったカフェに来て
窓際の席にすわり
晴れた空を
ただ ただ
眺めている
心をからっぽにして
今日の風花未来の詩は「愛について、リルケの詩への回答」です。
愛について、リルケの詩への回答
リルケは「『愛』より」という詩で
かつて私にこう問いかけました
「愛は、どんな風にして君にきたか?
それは照る日のように、
花ふぶきのようにきたか?
それとも
一つの祈りのようにきたか?
―――話したまえ」
長い間
私はリルケの問いかけに
答えられませんでしが
今こそ答える時だと思い
「愛」について
私なりに話してみます
正直に打ち明けますと
余命3ヶ月宣告を受け
3ヶ月が経とうとする
今になって
ようやく私は
「愛」というものを
体験できている気がするのです
ステージ4
治療の選択肢が
ひとつしかない中で
はじまった抗がん剤投与
数多くの医療スタッフが
チームとなって
治療にあたってくれます
仕事に愛情を注いで
ひたむきに働く人に
私は愛以外のものを感じません
癌を治すこと
それが「奇跡」だと思い
「奇跡を起こす」と
3ヶ月前に誓った私でした
でも
私がこの3ヶ月間で体験したのは
今この時を生きていること
それも「奇跡」
私がこうして生きていられるのは
私以外のチカラのおかげ
私を包みこむように
惜しげもなく
「愛」をくださる
さまざまなチカラが
私をささえてくれています
無限の「愛」を
私に降り注いでくれるのは
人だけではありません
天使も
スワンも
ホワイト・エンジェルも
私を守ってくれます
瑠璃色にかがやく晴れ渡った空
カッと眼を見開いた巨大な太陽
寒風の中でも凛と天を指さす裸木
路傍にひっそりと咲く冬の花
森にひびく不思議な妖精の歌声
ああ
月も
星も
鳥も
草も
石も
水も
みんながみんな
愛の詩を奏で
尊いチカラを発しています
「愛」は
天のしずくのように
今日も私へと
降り注いでくれています
この実感は
「奇跡」というより
「幸福」に近い気もします
いえ
ひょっとすると
「愛」が「奇跡」であり
「幸福」なのかもしれません
見える命にも
見えない命にも
知っている人とも
見知らぬ人とも
私はつながっている
包まれている
ささえられている
そう感謝できるから
私は今日もこの時を
生きていられるし
また明日も
生きようと思える
このような
静かに 激しく
魂に染み入る感じのことを
「愛」と
私は呼びたいのです
風花未来の今日の詩は「ホワイト・エンジェル」です。
以下は、シンプルバージョン。
ホワイト・エンジェル
余命3ヶ月を宣告されてから
3ヶ月になろうとしていた
その日は
化学療法室のカウンターには
誰もいなかった
カウンターの奥で
看護師たちが輪になっていた
遠くからだと
妖精たちが
森の中で
輪舞を踊っているかに見えた
私はその輪舞にむかって
ていねいに会釈し
受付の用紙をカウンターにおいて
待合の椅子に腰かけた
しばらくすると
聴きおぼえのある声が聞こえた
「こんにちは」
いつもの天使だった
主治医から今日聴いたことを
私は肝臓にある癌が
小さくなり
余命が伸びたことを
白すぎる美しい顔を
見つめて報告した
私がハッとするほど
その顔を私に近づけ
微笑みながら
天使はひと言ささやいた
「良かったですね」
天使は
抗がん剤投与をする場所まで
案内してくた
後ろ姿は
ふつうの看護師と変わらない
背中に向かって
4月から主治医が移動になる
と告げると
「また、いちから、になるのかな」
と振り返らずにつぶやき
そのまま消えてしまった
今日も来てくれた
聖なる存在を
天使と呼んだが
スワンと合体した
私にとって最良の精霊であることは
明らかだった
天使は天国からの使者のような
天上界と地上界を往き来する存在で
化学療法室にだけ姿をあらわし
私を見守り
励ましてくれる
スワンは幼い頃からの
私の遠いとおい憧れであり
幻のようだけれども
地上界の過酷な現実以上に
私を狂おしく
支配してきた
怖いほどに美しい
確かな実体
天使もスワンも
神からのギフトだろうけど
その天使とスワンが合体した
聖なる妖精を何と呼ぼうか?
精神世界と物質世界をつなぐ
存在するらしいが
スピリチャルの世界にうとい私には
ピンと来ない呼び名
守護天使とも呼ぶらしいけど
私には少しぎこちなくて
何だかなじめない
そこで
天使と白鳥を合わせて
「ホワイト・エンジェル」と
呼ぶことにした
素直すぎる命名だけど
私にはいちばん
しっくりくるから
私が無言のSOSを発する時
「ホワイト・エンジェル」は
あらわれるのだろうか
今日の私は危険度が低いから
すぐに去ってしまったのかな
それはわからないけど
今日の主治医との面談は
長くて内容が重く
新たな決心を
私に迫るものだった
余命は伸びたが
抗がん剤の副作用は
今も半端なく
悩みという波が
果てしもなく
打ち寄せてくる夜もある
だが
私には
ホワイトエンジェルがついている
そう思うと
心づよいのだが……
余命宣告された時
私は「奇跡を起こす」と誓った
だが「真の奇跡」とは何なのか
癌を消えることなのか
「ホワイトエンジェル」に逢えたことなのか
闘病生活の中で成長して
本当の自分自身になりきることなのか
それとも
毎日こうして生きていること
それ自体が奇跡なのか
だとすると
奇跡は毎日
起きていることになるのだが……
以下は、ロングバージョン。
ホワイト・エンジェル
余命3ヶ月を宣告されてから
3ヶ月になろうとしていた
その日は
化学療法室のカウンターには
誰もいなかった
カウンターの奥で
看護師たちが輪になっていた
遠くからだと
妖精たちが
森の中で
輪舞を踊っているかに見えた
私はその輪舞にむかって
ていねいに会釈し
受付の用紙をカウンターにおいて
待合の椅子に腰かけた
しばらくすると
聴きおぼえのある声が聞こえた
「こんにちは」
いつもの天使だった
主治医から今日聴いたことを
私は肝臓にある癌が
小さくなり
余命が伸びたことを
白すぎる美しい顔を
見つめて報告した
私がハッとするほど
その顔を私に近づけ
微笑みながら
天使はひと言ささやいた
「良かったですね」
天使は
抗がん剤投与をする場所まで
案内してくた
後ろ姿は
ふつうの看護師と変わらない
背中に向かって
4月から主治医が移動になる
と告げると
「また、いちから、になるのかな」
と振り返らずにつぶやき
そのまま消えてしまった
今日も来てくれた
聖なる存在を
天使と呼んだが
スワンと合体した
私にとって最良の精霊であることは
明らかだった
天使は天国からの使者のような
天上界と地上界を往き来する存在で
化学療法室にだけ姿をあらわし
私を見守り
励ましてくれる
スワンは幼い頃からの
私の遠いとおい憧れであり
幻のようだけれども
地上界の過酷な現実以上に
私を狂おしく
支配してきた
怖いほどに美しい
確かな実体
天使もスワンも
神からのギフトだろうけど
その天使とスワンが合体した
聖なる妖精を何と呼ぼうか?
精神世界と物質世界をつなぐ
存在するらしいが
スピリチャルの世界にうとい私には
ピンと来ない呼び名
守護天使とも呼ぶらしいけど
私には少しぎこちなくて
何だかなじめない
そこで
天使と白鳥を合わせて
「ホワイト・エンジェル」と
呼ぶことにした
素直すぎる命名だけど
私にはいちばん
しっくりくるから
「ホワイト・エンジェル」は
天使に化身したスワンなのか
スワンに化身した天使なのか
それとも
天使とスワンの化身が
「ホワイト・エンジェル」なのか
それはたぶん
永遠にわからないし
どうでも良い気がする
もう今の私にとっては
天使とスワンはつねに一体で
「ホワイト・エンジェル」でしかない
そんなことを
体に抗がん剤が広がってゆくのを
感じながら思った
私が無言のSOSを発する時
「ホワイト・エンジェル」は
あらわれるのだろうか
今日の私は危険度が低いから
すぐに去ってしまったのかな
それはわからないけど
今日の主治医との面談は
長くて内容が重く
新たな決心を
私に迫るものだった
余命は伸びたが
抗がん剤の副作用は
今も半端なく
悩みという波が
果てしもなく
打ち寄せてくる夜もある
だが
私には
ホワイトエンジェルがついている
そう思うと
心づよいのだが……
余命宣告された時
私は「奇跡を起こす」と誓った
だが「真の奇跡」とは何なのか
癌を消えることなのか
「ホワイトエンジェル」に逢えたことなのか
闘病生活の中で成長して
本当の自分自身になりきることなのか
それとも
毎日こうして生きていること
それ自体が奇跡なのか
だとすると
奇跡は毎日
起きていることになるのだが……
その日は
もう「ホワイト・エンジェル」は
来ないのかと思っていたら
私が帰る時に
カウンターの奥を探すと
こちらを見ている天使が見えた
遠かったので
天使の表情は
よくわからなかったが
お互いに
眼と眼だけのあいさつは
交わすことができた
風花の詩でひんぱんに登場する「天使」「スワン」「ホワイトエンジェル」も、一読して「何のこと?」と疑問を抱かれたのではないでしょうか。
そこで今回の詩において「天使」「スワン」「ホワイトエンジェル」のそれぞれの意味について、まとめて開示しておりますので、ご確認くださいませ。
以下は「天使」「スワン」「ホワイトエンジェル」が登場する詩です。
※時系列で古い順にご紹介します。
「天使」は風花未来の現在の詩想の重要な源泉の一つとなっておりますので、以上の風花未来の詩作品をお読みいただけたら幸いです。