今日の風花未来は「天使が消えた夜

 

天使が消えた夜

 

抗がん剤の副作用が

激しい日のことを

「天使が消えた夜」と

呼ぶことにした

 

情け容赦ない暴風雨の日に

私は天使を呼ばない

天使は来るべき時に来る

天使に救われようと

思ってはいけない

 

自分を救う道は

ただ一つ

自分であること

 

のたうちまわっていても

悪寒と火照りで苦しんでいても

自分さえ見失わなければ

天使は遠くで見てくれている

と私は信じている

白い姿は見えないけれど

 

今日も「天使が消えた夜」だ

 

論理体系を失った頭に

つぎつぎに現れる

物語としてつながらない

脈絡なしの幻覚風景が

明滅しながら

回転しながら

飛び去ってゆく

 

「天使の消えた夜」では

狂っているのが当たり前

 

手も脚もしびれて

自由にならないことが

当然なので

これに逆らってはいけない

 

夢も慈悲も憧れも

何もない世界が

「天使が消えた夜」だ

だから求めたら

余計に苦しくなる

 

無節操な台風は

いつか過ぎ去る

 

果てしのない

凍った夜の底で

 

清らかな

静けさの中で

白い光が

さざ波となって

打ち寄せてくる時を

 

私ではない私の中の

かすかな私らしい私が

ささやくように

夢見ている

祈っている