風花未来の今日の詩は「夜明けを待つ」です。

 

夜明けを待つ

 

賢者の後ろ姿が

見えたと思うが早いか

一瞬のうちに消え去った

 

進むべき道を教えよ

と問いたかった

人生の師も

私から遠ざかって行った

 

抗がん剤投与は

2週間だけ休みとなった

激しい副作用の苦しみはないが

発疹などの後遺症が

いや 眼に見えない何かが

じわじわと私の首をしめてくる

しつこく皮膚を犯しつづける湿疹は

私の肉体の老廃物だけでなく

心の迷い、弱さ、汚濁、邪気などが

噴き出ているのではないか

 

暗く曲がりくねった

細い道を

とぼとぼと往くように

私の足取りは心ぼそい

途方に暮れて

夜空を見上げても

星ひとつ見えない

 

沈黙が重すぎる

だが しかし

私は幻の影を追い求めない

 

風よ 吹いてこい

私のこよなく愛する帽子を

吹き飛ばすほど

激しく 狂おしく

私の前途から吹いてこい

 

私が求めるのは幻影ではない

私が詩にした

天使も

スワンも

まどか愛も

夢幻ではない

 

現実よりも確かな存在

 

やわらかく

しなやかで

時に厳しく

かぎりなく温かいものは

今は眼に見えないが

どこかに息づいている

 

やがて

夜が明ければ

かぎりなく温かいものは

透き通った光となって

私を包んでくれるだろう

 

だから

今は闇の底で独り

心を澄まして

じっと

夜明けを待つ

幻ではない

確かな力を信じて