映画「任侠男一匹」を初めて鑑賞した。
古き良き、任侠映画の魅力を凝縮したかのような佳作である。
映画「任侠男一匹」は、1965年に公開された日本映画。
監督はマキノ雅弘。主演は村田英雄。共演は鶴田浩二、北島三郎、長門裕之など。
ひと言でいえば、浪曲、浪花節の世界である。それ以外の要素はないが、それだから良いのだ。
水戸黄門や当山の金さんなどと同じで、正義が悪を倒す勧善懲悪のパターン化した物語以外の何物でもない。
私の父親の世代が好きそうな映画だが、私自身も、年齢を重ねるとともに、こういう映画を好むようになったのかと思うとちょっと複雑な気分にもなるが……。
まあ、今回のレビュー記事は、理屈抜きに行きたい。
まず、村田英雄の主題歌が良い。「明治劇場」という曲である。誰も知らないだろう。私は隠れ村田英雄ファンだが、この楽曲は聴いたことがなかった。
名曲である。特に村田英雄の全盛期の声量と、これでもかとばかりに回しまくいる小節まわしがたまらなく痺れる。
共演は鶴田浩二。鶴田浩二は最初と最後の登場するだけだが、最後の大立ち回りさすがである。
北島三郎は、名曲「兄弟仁義」を歌うが、アップテンポの編曲も良かった。
繰り返すが、古典的な任侠映画だが、古い時代劇のように、予定調和の定型ストーリーだから良いのである。
ヘタなヒネリなどないほうが良いのだ。勧善懲悪でなければならず、物語は単純であればあるほど感情移入しやすい。
しかし、時代とともに滅びる娯楽映画とも言えるかもしれない。
男と女の関係、社会的な位置づけなどが、現代とはまるで違っているので、女性が好む映画ではあるまい。
どんどんと廃れてゆく世界である。
でも、それでも良いと、あえて私は言いたい。
昭和という時代は過ぎ去った、もう二度と戻らない。
この映画に描かれた世界、この映画に流れる抒情を愛する人は、密かに、本当に密やかに、酒などを飲みながら、語り継げば良いのだろう。
今の私は体力的にも精神的にも衰弱しているので、複雑な思考や長時間の緊張持続が困難なため、こうした単純明快なエンタメ作品がありがたいのである。
しかし、こういう映画は何本鑑賞しても同じなので、新しいものを得ることはなく、気づきもないので、もう観ないかもしれない。