映画「あン時ゃどしゃ降り」は歌謡映画の隠れ名作

映画「あン時ゃどしゃ降り」をご紹介。

 

この映画を観たよ、と周囲の人に言うのが恥ずかしいくらい、ベタな娯楽映画。タイトルからしてねぇ~。

 

でも、これがなかなかどうして、観て損はしない、よくできた良質なエンタメ作品となっている。

 

「あン時ゃどしゃ降り」は、1958年に公開された日本映画。監督は森永健次郎。当時人気の春日八郎が映画中で歌う、いわゆる歌謡映画シリーズだ。

 

映画「あン時ゃどしゃ降り」はこちらで視聴可能です

 

まだ吉永小百合がデビューしておらず、つまり、日活青春シリーズは始まっていないので、「あン時ゃどしゃ降り」は白黒の地味な作風となっている。暗いと言えば暗い……。

 

と私が言っただけで、引いてしまい、スルーする人も多いに違いない。でも、ちょっと待ってもらいたい。本当に一見の価値ある佳作なのである。

 

監督は森永健次郎、主演は青山恭二香月美奈子。ともに広く知られる役者ではないが、二人の好演が光っている。

 

青山恭二の兄貴分を演じるのが春日八郎である。昭和生まれの人ならば誰もが知っている歌手だ。役者として観るのは、私もこの映画が初めてだった。演技はうまくないが、頑張っていて、好感が持てた。

映画「ラブ・レター」のラストシーンは、視聴者のあらゆく予測を裏切る?

今日ご紹介する映画「ラブ・レター」は、1945年に制作されたアメリカ映画。

 

監督はウィリアム・ディターレ。主演は、ジェニファー・ジョーンズジョセフ・コットン

 

ラブ・レター

 

以前、ジェニファー・ジョーンズとジョセフ・コットンが共演した別の映画をご紹介したことがある。それが、以下の作品。

 

映画「ジェニーの肖像」のレビュー記事

 

ジェニーの肖像」もミステリアスな映画だったが、今回鑑賞した「ラブ・レター」も、結末が最後まで予測できなくてハラハラした。

 

作風が「ジェニーの肖像」と似ていると思ったら、監督は共にウィリアム・ディターレだと知り、思わず納得。

 

この監督の心理描写は、純粋なので感動してしまう。

 

物語の結末は完ぺきだ。あらゆる予測を、良い意味で裏切ってくれる。私が最も恐れたラストシーンとは違っていたので、救われた気持ちになった。

 

それにしても、役になりきっている、ジェニファー・ジョーンズは、あまりにも美しい。

映画「終身犯」は、バート・ランカスターの神演技が光る、心理劇の傑作

今回は映画「終身犯」をご紹介。原題は「Birdman of Alcatraz」。アルカトラズ刑務所の鳥男、である。映画を最後まで見れば、この原題の意味をご理解いただける。

 

「終身犯」は1962年に制作されたアメリカ映画。

 

主演はバート・ランカスター。監督はジョン・フランケンハイマー

 

終身犯のバート・ランカスター

 

この映画こそ、隠れ名作という言葉がふさわしい。

 

正直、ほとんどの人がご存じないのではないか。無名の映画だが、傑作中の傑作と評価したくなる深さを備えた心理映画だ。

 

二人の人間を殺害した男が、一羽のスズメと触れ合うことで、心の中の優しさが目を覚まし、この映画を鑑賞する者は、次から次への驚異的な出来事に、ときめき続けることになる。

 

私たち一般人は、シャバ(現実社会)で、自由な生活を謳歌できるわけでなく、日々息苦しさにあえぎながら生活している。

 

実人生は、まるで、籠の中の鳥のように不自由である。

 

それに反し、この映画の主人公であり、実在の人物でもある、ロバート・フランクリン・ストラウドは、独房暮らしであるにもかかわらず、粘り強い学習と創意工夫、羽ばたく鳥のように自由な想像力によって、獄中で鳥類の研究を続け、やがて鳥類学の権威となってしまう。

 

そのため、現実社会で絶望的になっている者も、例えば私自身、この「終身犯」を見ると、人生の深い示唆と勇気と希望が得られるのだ。

 

主演のバート・ランカスターの存在があまりにも大きい。彼以外では、この映画は成立しない、と思うほどだ。

 

人間の心理をきめ細かく表現する、いわゆる「性格俳優」としての卓越した才能を、バート・ランカスターはいかんなく発揮している。

 

バート・ランカスターの演じた心理劇映画としては「愛しのシバよ帰れ」も佳作である。

 

「愛しのシバよ帰れ」のレビュー記事はこちら

 

刑務所の中という限定された空間だからこそ、人間の心理の深奥までを映し出せたのだと思う。

 

刑務所の中にこそ自由はあり、現実社会こそが鳥籠のような独房なのだ。

 

最後に日本語吹き替えのレベルの高さに触れておく。

 

この日本語吹き替えは、それ自体が芸術である。熟練の技量が、いぶし銀のように輝いている。