黒澤明監督の映画「椿三十郎」を久しぶりに見ました。久しぶりですが、これまでに5回以上は見ていると思います。

 

今回の鑑賞で気づいたことを、忘れないうちに記しておきたいのです。

 

黒澤明の映画作品の中で、最も作品として完成度が高いのは、この「椿三十郎」である、と今回の鑑賞で確信しました。

 

黒澤明の全作品の中から、ベスト10をあげろと言われたら、私はちゅうちょなく以下の3作品をあげます。

1位は「羅生門」。2位は「七人の侍」、3位は「白痴」。

 

ベストという言葉には、作品としての完成度よりも、その独創性、純粋さ、激しさなどを総合しての存在価値という意味を私は込めました。

 

「白痴」は編集に無理があり、作品としての完成度は高くありません。しかし、それを補って余りある熱情および狂気が表現されているので、1位に推したいくらいです。

 

話を「椿三十郎」に戻しましょう。

 

「椿三十郎」は、1962年(昭和37年)1月1日に東宝が公開した日本映画です。監督は黒澤明。主演は三船敏郎

 

特筆すべきは、96分という短さです。黒澤明の映画は、長い作品が多いのです。

 

黒澤映画の過剰性および冗長性は「椿三十郎」では姿を消し、全く無駄のない、コンパクトで、テンポの良い作品となっています。

 

硬派で、精神性、社会性の強い他作品と比べると、娯楽性が強い作品にジャンル分けされがちですが、私自身そうしてきましたが、実は躍動感あふれるアクション、切り詰められたセリフの中に、黒澤明の真骨頂が圧縮されており、完成度においては、ナンバーワンと評して間違いないでしょう。

 

黒澤明と三船敏郎という天才コンビが見事にシンクロしており、奇跡的な結晶度を示しています。

 

特に、三船敏郎の殺陣シーンは、究極の冴えを見せており、1分以内で20人もの敵を斬るシーン、ラストの仲代達矢との居合い抜きの決闘など、映画史に残るアクションが見られます。

 

しばしば比較される「用心棒」よりも、作品として優れていると感じました。

 

これからも私は、この「椿三十郎」は、繰り返し鑑賞するに違いありません。