「陣頭に立って指図をする。指揮する」ことを、「采配を振るう」、それとも「采配を振る」というのか、あなたはどちらを使っていますか?

 

「振るう」と「振る」の違いだけなのですが、これはかなり紛らわしいですよね。

 

案の定、間違いやすい日本語として、多くの人を悩ませているらしい。

 

その証拠として、文科庁の「国語に関する世論調査」があげられるのです。はてさて、その結果は?

 

平成20年度の文科庁「国語に関する世論調査」では、「采配を振る」と答えた人が28.6%、「采配を振るう」が58.4%でした。

 

また、同じく文科庁の平成29年度「国語に関する世論調査」では、「采配を振る」が32.2%、「采配を振るう」が56.9%という結果が出ています。

 

本来は「采配を振る」が正しいのです。「振る」を「振るう」と間違えている人の方が多いわけですが、こういう間違いやすい日本語が実に多いのには困りますよね。

 

「采配」とは戦国時代に、戦場で大将が兵士を指揮するために振った道具のこと。厚紙を細く切って束をつくり、これに柄をつけたもの。

 

この「采配」を前後左右に振って指揮したことから、「采配する」「采配を振る」で、「指図する、指揮する」という意味になったのです。

 

では、一方おん「采配を振るう」という言葉はどうでしょうか?

 

「振るう」には「大きく振り動かす、十分に発揮する」という意味があり、「剣を振るう」「腕をふるう」というふうに使います。

 

「振る」も「振るう」も、極めて似た意味を持ってますし、なおかつ「采配」は「振り動かす」ものですから、区別が難しいわけです。

 

現在、辞書の中には「采配を振るう」を認めるものを出てきているようです。

 

新聞社などの用語集では、「采配」の項目に「采配を振る・振るう」と記載して「采配を振るう」を認めるものが過半を占めているとも言われています。

 

「振るう」の表記が例示されていた辞書には、「三省堂国語辞典 第七版」と「日本国語大辞典」があります。

 

 

采配】(1)昔、大将が兵の指揮に使った道具(2)指揮。◇采配を振る さしずする。采配をとる。采配を振るう〔=ふり動かす〕。「監督が-」(「三省堂国語辞典 第七版」より)

 

さいはいを=振(ふ)る[=振(ふ)るう]自ら先頭に立って、指揮、運営にあたる。指揮をする。指図をする。采配を取る。「おぬしに表門の采配を振らせるとは、林殿にしては好く出来た」(『阿部一族』森鴎外、1913年)…(中略)…「その下で編輯(へんしゅう)の采配を揮(ふる)ふばかりでなく」(『闘牛』井上靖、1949年)(「日本国語大辞典」より)

 

あまりにも間違えやすいので、誤用も認めるようになる、というのが時代の流れなので、「采配を振るう」もほとんどの辞書に堂々と載る日もそう遠くないかもしれませんね。