「身土不二」という言葉をご存知でしょうか。
仏教用語では「しんどふに」と読み、食養用語では「しんどふじ」と読みます。
この少しミステリアスな言葉を、私は「チャンネル北海道」というYouTube番組で知りました。
「身土不二」という言葉を使ったキャスターは、酪農大学の出身だとか。どうやら「身土不二」は、農業でよく使われる言葉らしい。
一度聞いて、非常に良い言葉だと直感し、その意味を自分なりに噛みしめております。
「身土不二」は味わえば味わるほど、深く、美しいと感じる不思議な言葉なのですね。
ウィキペディアは「身土不二」を以下のように説明しています。
身土不二
(しんどふに)仏教用語。「身」(今までの行為の結果=正報)と、「土」(身がよりどころにしている環境=依報)は切り離せない、という意味。
(しんどふじ)食養運動のスローガン。「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い。」という意味で、大正時代に「食養会」が創作した。
また「幸せ経済研究」は以下のように解説。
身土不二とは、「身と土、二つにあらず」、つまり人間の体と人間が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという意味の言葉です。
言葉の起原は大昔の仏典に遡ることができますが、現在では食の思想として「その土地のものを食べ、生活するのがよい」という意味で使われています。
「身と土、二つにあらず」とは、わかりやすく、よく響く説明ですね。
スマホなどの端末の進化、またインターネットコンテンツの充実により、私たちの生活はいろんな意味でバーチャル化しています。
物理的・日常的な生活と情報の中に没入する時間、どちらがメインなのかわかりにくくなっているのが、現代人の生活なのだと思うのです。
現実と仮想現実、その区別がつきにくいだけでなく、そのどちらの方に重きを置いているのかも判然としないで暮らしている人が多いのだと思います。
そうしたバーチャル生活のまん真ん中に、いきなり「身土不二」という言葉をすえられたら、誰もが戸惑いますよね。
しかし、その戸惑いの後に、何とも知れない親しみを覚え始めている自分を見つけて、私はハッとしました。
「身土不二」の「身」は、単なる体だけでなく、心も含まれる、つまり、生命体全体を指すと解釈しても差し支えないでしょう。
その「生命体」は「土」、即ち、「大地」「環境」などと不可分であるという思想は、バーチャルな時代だからこそ、余計に貴重なのではないでしょうか。
「身土不二」は、命の根源に関わる言葉です。
また、真の豊かさとは何か、について考えてゆく時、重要なヒントを与えてくれる、「身土不二」という言葉を呪文のようにつぶやいていると、ふと視界が開けるのではないか、という嬉しい予感を禁じ得ません。
だから、仏教や食養などを意識しなくても、もっと日常的に親しみたい、もっとひんぱんに使いたい言葉だと私は感じています。
短く、わかりやすく、そして、味わい深い。
その意味から「身土不二」を、美しい日本語の一つに加えたいと思いました。