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八木重吉の詩「素朴な琴」

八木重吉の「素朴な琴」というをご紹介します。

 

【動画】八木重吉の詩「素朴な琴」について

 

私が最も敬愛している詩人の一人に、八木重吉がいます。

 

八木重吉の詩の中から、一篇だけを選べと言われたら、おそらくは10人のうち8~9人までが選ぶのではないか、そう思いたくなるほど美しさがあるのです。

 

その詩が「素朴な琴」。

 

さっそく、全文を引用してみましょう。

 

素朴な琴

 

この明るさのなかへ

ひとつの素朴な琴をおけば

秋の美しさに耐へかね

琴はしづかに鳴りいだすだろう

 

 

八木重吉の詩「素朴な琴」の朗読はこちらに

 

これが全文です。たったの4行だけ。

 

いかがでしょうか?

 

八木重吉詩集を読むとわかるのですが、短い詩がたいへん多い。始まったと思ったら、呆気ないほど簡単に終わってしまう詩が珍しくありません。

 

高村光太郎は八木重吉の詩について「一切の中間的念慮を払いのけることができた」と述べています。

 

つまり、余計なことをグダグタ書かないのが、八木重吉の魅力の一つでもあるのですね。

 

八木重吉の詩を読めば読むほど、八木重吉という詩人は、一生をかけて、余計なものを「払いのける」ことに専念したのではないか、と思うことでしょう。

 

八木重吉はこの世の夾雑物をすべて「払いのける」ことで、人生の中で最も大切なもの、美しいもの、愛すべきものをとらえたかったのだと思います。

 

あるいは、神羅万象の本質、まん真ん中の核心しか興味がなかったので、詩が短くなったとも言えるでしょう。

 

本質だけをとらえて、それだけを限界まで単純に表現する……この祈りに似た聖なる行為こそ、八木重吉の唯一の詩学なのです。

 

そして、その詩学の最も美しい結晶が「素朴な琴」なのだと私は信じています。

 

八木重吉の詩については以下の記事でも語っていますので、よろしければご覧ください。

 

⇒八木重吉の詩「母をおもう」

 

⇒八木重吉の詩「夕焼」

 

⇒八木重吉の詩「鞠とぶりきの独楽」と高村光太郎の推薦文。

 

八木重吉のその他の詩はこちらに

あはれ花びらながれ……三好達治の詩「甃のうへ」より

あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ」で始る甃のうへ」は、三好達治の代表作であると同時に、日本近代詩が生んだ名作の一つであります。

 

動画】三好達治の名詩「甃のうへ」を読んで「心のふるさと」を

 

この詩が人口に膾炙している(広く知られている)理由は、教科書に載っていたことと、何といってもその覚えやすさでありましょう。

 

音調も優雅で、しっとりとした情緒に浸ることができます。

 

さっそく、その「甃のうへ」を引用してみましょう。 この記事の続きを読む

中原中也の詩「一つのメルヘン」

秋の夜は、はるかの彼方に、小石ばかりの、河原があって」で始まる、中原中也の「一つのメルヘン」という詩を知らない人は、あまりいないのではないでしょうか。

 

それくらい有名な中原中也の代表作です。私が高校生の頃は、現国の教科書に載っていました。

 

【動画】(朗読)中原中也の詩「一つのメルヘン」

 

このブログでは、さまざまな詩を紹介してきましたが、中原中也の詩は少ないのです。

 

その理由は、二十歳そこそこの頃に、あまりにも中原中也にのめり込み過ぎたからでしょう。

 

大学在学中に「中原中也論」を書くらい、私は中原中也の詩に魅せられていたのです。

 

今でも、大学生の時と変わっていない思いがあります。それは「一つのメルヘン」は、中原中也の最高傑作である、ということです。

 

では、以下で、その思いの根拠である「不思議な幸福感」について、語ってみることにします。 この記事の続きを読む