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ウィリアム・アイリッシュ「暁の死線」を読んだ感想

ウィリアム・アイリッシュは、1903年から1968年まで生きた推理小説家です。別名はコーネル・ウールリッチ。代表作は「幻の女」「黒衣の花嫁」「喪服のランデヴー」など。「裏窓」はヒッチコックによって映画化されました。

ウィリアム・アイリッシュの小説は一時期、むさぼるように読みました。サスペンスの詩人と呼ばれるだけのことはあって、その詩情豊かな表現には存分に酔いしれたものです。

さて、今回ご紹介するのは「暁の死線」です。1944年作のサスペンス小説。⇒暁の死線 [ ウィリアム・アイリッシュ ]

かなり前に書いた私のレビュー記事を転載いたします。

(以下が、レビュー)

ストーリー展開、細密な心理描写などは優れている。だが、何か物足りない。中だるみがあり、表現に冗長なところが目につく。

最後までハラハラ読ませる力は、アイラ・レヴィンの「死の接吻」と「ローズマリーの赤ちゃん」の方が上である。

読者を最後まで引っ張る力を、分析することは難しい。単なる構造論、技術論だけでは済まされないところがある。言葉の喚起力、飽きさせない話法、登場人物の魅力、作者の発するエネルギーなどなど、語りきりないことは山ほどあるのだ。

アイリッシュは夜の作家だという思いを新たにした。都会の孤独と悲愁が、彼の作品を暗い霧でおおっている。

サスペンスの巧みな演出、シーンの作り方の工夫と冴え、気の効いた会話、豊かな詩情などが彼の作品を高めているが、いかんせんエネルギーが足りない。

病性・狂気と健全性・生命力との融合をスティーヴン・キングやガルシア・マルケスは、それぞれの傾向のもとに(前者は深い闇、後者は真昼の陽光)行っている。

しかし、ウィリアム・アイリッシュはどこまで行っても夜の作家だ。

その彼が、あえて暁に旅立つ若い男女を描いたことは興味深い。夜の作家が、夜明けを描く意味である。

この小説には読者を力づける真の力は弱いが、それでもアイリッシュは、何とかニューヨークという猛獣から、人を孤独にさせる怨念から、勇敢に脱出しようとしている。

意気揚揚と、「さらばニューヨーク」と彼は珍しく叫んでいる、というふうに感じた。

有名な「幻の女」につぐ、名作といえるだろう。

(レビューは、ここまで)

この「暁の死線」は、日本で4回もドラマ化されています。

私が見たのは、山口百恵三浦友和主演の赤いシリーズ最終作として、1980年に放映された「赤い死線」です。

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