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山田太一「星ひとつの夜」に主演した渡辺謙の存在感


もう見られないものと諦めていた山田太一の名作ドラマ「岸辺のアルバム」が、TBSオンデマンドで見られると知って、毎日一話ずつ、噛みしめるように鑑賞しています。

というものの、ここ数日、風邪気味で、なかなか先が見られないでいました。今日、自重の意味で外出を控えたところ、体調が戻りつつあるので、「岸辺のアルバム」ではなく、山田太一の別のドラマをDVDで鑑賞しました。

そのドラマというのが「星ひとつの夜」です。

「星ひとつの夜」は、山田太一ドラマスペシャルとして2007年5月25日の21:00~22:52まで、フジテレビ系列で放送されたテレビドラマです。 

山田太一のドラマは、凄く好きというわけではないのに、かなりの数を見て来ています。登場人物のセリフ回しが独特で、日常ではありえない会話のやりとりが、快感になり、クセになってしまうのです。

「星ひとつの夜」は、山田太一の中でも屈指の傑作だと感じたので、あえて、こうして感想を書いています。

作者の目線が低いです。優れたドラマだから当然かもしれませんが、山田太一は人生をいろんな角度から見ていますね。目線の低さはハンパではなく、ある時は、地面に這った状態で人間を見ているみたい。また、年齢も環境も全く違った2人を出逢わせ、物の見事に、共通するものを絞り出して見せる手腕は、のけぞるほどの力を持っていました。

言葉」はどうでしょうか。ドラマにおける言葉は、字幕を除けば、セリフしかありません。山田太一の生命線はセリフにあるのですが、その特徴はというと、流れのせき止めにあるのです。

セリフは澱まず、なめらかに流れればいいというわけではありません。山田太一は、わざわざ会話のリズムを崩し、セリフをつまづかせ、視聴者の意識を喚起するのです。

言葉は磨かれていますが、決して、格好よくはありません。でも、一つひとつのセリフは強い。視聴者の胸に杭を打ち込むような感じで、人物に言葉を話させるのです。

言葉は胸に響きますが、心地よくはありません。その味は苦く、時に、痛いほどです。現実の人生が苦いのと同じくらい、山田太一のセリフは苦い。

テレビドラマから、ファッション性をとことん排除し、出演者からロケ地、小道具に至るまで、すべてを人生を掘り下げて描くためだけに使っているのです。視聴率を稼ぐ工夫はしますが、あくまで作品の底力で勝負するのが山田太一のドラマづくりの信条だと言えます。

出演者には当時ハリウッドから凱旋帰国したばかりの渡辺謙、旬な若手俳優・玉木宏を起用。脇役も、演技派を揃えています。

私が感じたのは、渡辺謙のために書き下ろしたような脚本だということ。年齢を重ね、役者としての円熟味を増した渡辺謙の存在感を何と評したら良いのか。その存在感と釣り合う質の高い作品を作りたいと山田太一は願ったのではないでしょうか。そう思えてしまうくらい、渡辺謙の存在感は際立ち、作者としての愛情が渡辺謙に注がれ、その愛情の強さが、渡辺謙をさらに輝かせている気がするのです。

山田太一は、主人公を決して英雄としては描きません。むしろ、ぶざまで、不恰好な姿を、あるがままに描き出します。しかし、その姿は、人と人との関わりの中で受け入れられ、愛すべき存在として感じられ、最終的には美しささえも覚えてしまうから不思議です。

たいへん地味なドラマですが、視聴率は18.4%を記録したそうです。これくらいのドラマを年にせめて1回くらいは見たいものです。

山田太一はもちろん連続ドラマも良いのですが、単発ものも侮れませんね。というのは、以前に見た「遠まわりの雨」も非常に優れていたからです。その「遠まわりの雨」については、機会を改めて触れてみたいと思います。


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