テレビドラマ「塀の中の中学校」は、長野県松本市にある「松本少年刑務所」の中にある公立中学校「松本市立旭町中学校桐分校」が舞台となっています。
実在する刑務所内で実際にロケ撮影が行われた、日本でただ一つのテレビドラマです。
脚本は内館牧子。
私はTBSオンデマンドで見ました。何の予備知識もなくパソコンで鑑賞したため、映画なのかテレビドラマなのか、判別がつきませんでした。
モンテカルロ・テレビ祭のテレビ・フィルム部門においてゴールデンニンフ賞(最優秀作品賞)、モナコ赤十字賞、最優秀男優賞(渡辺謙に対し)を受賞いています。
最近は特に、有名な国際映画賞でさえも、受賞作品のレベルが怪しくなっているので、受賞作品だからといって本当に優れた作品かどうかはわかりません。
ただ、一度鑑賞してみれば納得されると思いますが、この「塀の中の中学校」、現在の邦画の水準をはるかに超えた質の高いテレビドラマです。
義務教育を終了していない受刑者のために、刑務所内で義務教育が行われていること自体を、知らない人が多いのではないでしょうか。
このテレビドラマは、義務教育を刑務所内で受けている受刑者の姿を描いており、それだけでも、かなりの価値があることは間違いありません。
正直、作り方がドラマ的すぎて、リアリティという点では、弱いと感じました。ドラマにするために、エピソードが詰め込まれ過ぎていて、それが作品としての品格を下げている気さえします。
それと、オダギリジョーのセリフに難点がありました。説明すぎ、また軽すぎます。他のシーンにも言えますが、役者をしゃべらせずに、表情だけで語らせる演出がもっと欲しかった。
しかし、そうした弱点を補って余りある存在が、この「塀の中の中学校」にはありました。それは2人の俳優です。
渡辺謙と大滝秀治。
渡辺謙は演出によっては、もっともっと素晴らしい演技ができる役者なので、少し残念に思いました。でも、それでも、渡辺謙の存在感は揺るぎがなく、このテレビドラマの軸となっています。いえ、心臓と呼んだほうが適切かもしれません。