詩心とは
「詩人」とは?
「詩人」とは、詩を書く人だけを指すのではなく、詩心を持っている人全員が詩人なのです。自分では気が付いていない場合が多いのですが、誰もが詩心を持っています。ですから、すべての人は詩人なのです。
では「詩心」とは?
「詩心」は「詩精神」、あるいは「詩魂」と呼んでもさしつかえありません。
この「詩心」は、詩を書くことの専門家である、いわゆる詩人だけが持っているのではなく、一般庶民も持っています。
だから、和歌(短歌)、俳句、近代詩などを理解できない日本人はいないのです。
「詩心」は詩を理解し、愛し、また詩を生み出す心でありますが、実はそれだけではありません。
人間が優れたものを作り出す時は、必ず「詩心」がはたらいています。ですから、「詩心」を軽蔑したり、無視する人は、自分の中にある詩心を活用できないので、優れたものは生み出せない、とあえて主張したいのです。
建築、絵画、彫刻、音楽、陶芸、文学などの芸術はもちろん、料理、喫茶、ダンス、大道芸、ファッション、接客などにも、「詩心」が必要だと私は思っています。
「詩心」は美的センスであり、創作能力であり、あらゆる表現活動の核となるものなのです。
そして忘れてはならないのは、詩心とは「何ものにも支配されない、自由な精神であり、時代(歴史)の本質を見ぬき、未来を予見する直観力」を指すこと。
その意味で、あのロシアの大文豪である、ドストエフスキーは紛れもない詩人であったのです。
そう、詩人は時に、預言者となります。
詩心の7つの美点
「詩人」と「真の詩人」の定義のところで、人が「真の詩人」になるためには「自立」が大前提となると述べました。
以下では、「自立」した「真の詩人」が有する「詩心」について解説します。
「詩心」には7つの美点(特性・特長)がありますので、その一つひとつについてご説明しましょう。
1)生きとし生けるものへ愛情(慈愛)
すべての生命に対する無条件の愛を有する心を詩心と呼ぶ。
2)視点を自由に動かせる能力(視点移動)
視点を固定してしまうことほど、非生産的かつ危険なものはありません。
視点を左右、上下だけでなく、過去や未来にも自在に動かせる能力こそ、豊かな明日(希望ある未来)を創造するためには欠かせません。
空間だけでなく、時間においても、自由に視点移動できるのは、詩心の働きによるものです。
より高次元の優れた結論を導きだすためには、複数の視点が必要だとはよく言われること。しかし実は、個人は視点を一つしか有しておらず、複数の視点とは、視点を移動させた結果、視点が増えることを意味するのです。
この視点移動の能力は、真実の解明、歴史の深い理解、左右の分断などによる誤解の解消、より豊かなプランの創造などに役立ちます。
実はこの「視点移動」の名人だったのが、詩人の金子みすゞなのです。
3)すべてのものから自由な精神(自由)
既成概念、固定概念、先入観、道徳、宗教、イデオロギー、あらゆる洗脳・謀略工作などから自由な精神を詩心と呼ぶ。
4)物事の本質を見ぬく洞察力(直観)
事象の核心をつく、物事の本質をつかむ洞察力を、詩心と呼ぶ。
5)美を感じる(もののあはれを知る)心(審美)
豊かに美を感じ、もののあはれを知る繊細な心を、高い審美眼と美意識そのものを、詩心と呼ぶ。
6)未来を予見し、より良い未来を企画する能力(想像力)
豊かなイマジネーション(想像力)も、詩心の大事な特性。想像力が優れているからこそ、より良い未来の形を、具体的にプランニング(企画)できるのです。この想像力を拡張するなら、未来を予見する予知能力を持つことも可能でしょう。
7)幸を分け合う、和の精神(調和)
人と空間(自然・街)と時間(歴史・伝統文化)との調和を希求する精神を、詩心と呼ぶ。
和を尊び、魂と宇宙との調和を求めるのも、優れた詩人の特徴。
「和の精神」は、利己愛を、さらには利他愛をも超えた、広くて深い大きな愛だと言えるでしょう。