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三好達治の詩「大阿蘇」は教科書に今も載っているでしょうか?


先日は三好達治の詩「乳母車」をご紹介しました。今回は同じく三好達治の「大阿蘇」を取り上げます。

雨の中に 馬がたつてゐる

一頭二頭仔馬をまじへた馬の群れが 雨の中にたつてゐる

雨は蕭蕭(しょうしょう)と降つてゐる

馬は草を食べてゐる

尻尾も背中も鬣(たてがみ)も ぐつしよりと濡れそぼつて

彼らは草を食べてゐる

草を食べてゐる

あるものはまた草もたべずに きよとんとしてうなじを垂れてたつてゐる

雨は降つてゐる 蕭蕭と降つてゐる

山は煙をあげてゐる

中岳の頂きから うすら黄ろい 重つ苦しい噴煙が濛濛とあがつてゐる

空いちめんの雨雲と

やがてそれはけぢめもなしにつづいてゐる

馬は草をたべてゐる

艸千里浜(くさせんりはま)のとある丘の

雨に洗はれた青草を 彼らはいつしんにたべてゐる

たべてゐる

彼らはそこにみんな静かにたつてゐる

ぐつしよりと雨に濡れて いつまでもひとつところに 彼らは静かに集つてゐる

もしも百年が この一瞬の間にたつたとしても 何の不思議もないだらう

雨が降つてゐる 雨が降つてゐる

雨は蕭蕭と降つてゐる

手元にある新潮文庫の「三好達治詩集」を開いたのですが、この「大阿蘇」は見つかりませんでした。遠い記憶に、鮮明にこの詩は刻まれているのですが、おそらくは教科書で読んだのだと思います。

三好達治が伝えたいテーマと、言葉の流れ、言葉のリズムが、精妙に溶け合っていて、何度読んでも、心地よいと感じる、稀有な詩作品です。

「大阿蘇」に描き出された雄大な空間と悠久たる時の流れが、せちがらい現代社会に生きる私たちに、この上もない癒しを与えてくれます。

美しい日本語で書かれた作品をまとめました。


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