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美しい日本の短編小説を選ぼうとして、かなり苦労しました⇒日本一美しい短編小説は?

「苦労」の意味は、選出したい作品が極めて少ないからです。それだけ、小説を短く書くのは難しいということでしょう。

一方、中編小説ですと、たくさんの作品が想い浮かび、ピックアップするのが楽しくなるのです。

では「語り継ぎたい美しい日本の中編小説」を、私なりに選び出してみることにします。

1)石川淳紫苑物語

美文という言葉がこれほど当てはまる小説はないように思われます。この小説にある「人を酔わせる力」は、いったいどこから来るのか、それを突き止めるために、もう一度、読んで見たい作品です。紫苑物語 (講談社文芸文庫)

2)丸山健二夏の流れ

あの三島由紀夫が絶賛したと言われていますが、すぐに「なるほど」と感じました。というのは、この「夏の流れ」が優れていることはもちろんですが、三島は「自分では絶対にこういう小説は書けない」と確信したのでしょう。それくらい、三島が人工的に構築した世界とは真逆の小説空間が描き出されています。その空間で呼吸する人間の汗のにおい、皮膚感覚まで伝わってくるリアリティが凄い。夏の流れ (講談社文芸文庫)

3)立原正秋剣ヶ崎

予想どおり、絶版になってしまいました。立原という作家は駄作も多いので、全体の評価が低く、次々に絶版になっています。しかし、この「剣ヶ崎」は、ぜひとも読んでおきたい「美しい文体で書かれた小説」です。苛烈なまでの哀しみが、美に昇華された稀有な作品。剣ケ崎・白い罌粟 (新潮文庫)

4)宮本 輝泥の河

宮本輝の初期の傑作。彼の全作品を通じて、最も文体に緊張感があり、文章に日本人ならではの情緒があふれています。「蛍川」とこの「泥の河」は、まさに「美しい日本語で書かれた小説」と言えるでしょう。蛍川・泥の河 (新潮文庫)

5)中島 敦李陵

歴史小説でありながら、その文体はまるで散文詩のように美しい。語るというよりも、歌うように書かれていると感じるほどです。中島敦の文学は、実はこの「詩精神」がキーワードだと私は思っているのですが、その「詩人としての才能」に長けていたがゆえに、長編小説が書けなかったのではないでしょうか。中島敦は小説家というよりも、詩人と呼んだ方が当たっている気がします。海外では、優れた作家のことを、小説家であっても「詩人」と呼んで賞賛するらしいのですが、中島敦も、何をおいても「詩人」と呼びたい作家のひとりです。李陵・山月記 (新潮文庫)

6)水上勉越前竹人形

陰惨なほど暗い小説ですが、竹林にヒロインが現れるシーンがあまりにも印象鮮やか。その場面を読むと、類いまれな美しい文章によって、幻想的な世界に、すぐさま拉致されてしまう。むせかえるようなエロチズムと美文の交合により、怪しい酔いに浸れます。雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)

7)山本周五郎「赤ひげ診療譚」

黒澤明の映画「赤ひげ」の原作となった小説。深い。深く踏み込んだ人間の描き方に、すさまじい迫力が感じられます。文体は淡々としているのに、その深淵な人間ドラマへと知らぬ間に引き込まれてしまう。これこそが、一流の作家の筆力なのかもしれません。赤ひげ診療譚 (新潮文庫)

美しい日本語で書かれた作品をまとめました。


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